book
□2
1ページ/1ページ
「図書室から見える場所ってどこだよ…」
広いんだよこの高校。
初めはずっと迷ってて、2年や3年の校舎に行っちゃってたな。
走っていると、ちょうど背の高い木が見えた。
そこに行くと、
「…いた」
半分に開いた本を顔の上にのせて、寝てると思われる人物。
結局顔わかんねえ。
本をどけてまで見るのもなんか嫌だしな。
あいつらには適当に言っとけば良いか。
戻ろうと足を1歩進めると、ぐしゃ、と嫌な音が足元で聞こえた。
何か踏んだ?
それを拾うと、何か書かれてる紙だった。
開けるとそこには、
18:00 会議
とだけそっけなく書かれているだけだった。
これってこいつのか?
ってか18時ってもうあと15分くらいじゃん。
普通に寝てるけど、時間大丈夫なのかな。
「…起こすべきか?」
でも別に他人だしな。
でも見て見にフリもちょっとひどいよな。
どうしよ。
あーもう、じれったい。
意を決して、声をかけた。
「あの…」
爆睡。
いやいや寝すぎだろ。
もう放っとくか?
いやそれは俺の性格としても出来ないな。
ため息が出て下を向くと、白衣の胸ポケットの中から何か出てる。
これ、名札か?
「緑間、真太郎?」
「んっ…誰だ…?」
「うわっ!」
え、起きた、どうしよ。
いや起きたなら良いのか。
緑間とやらは目をこすりながら起き上がる。
思考回路が出来ていないのかぼーっとしてる。
ってか美人だな。
顔整いすぎだろ。
「あ、あのさ、会議あるんじゃねえの?時間もうすぐだけど」
言って、さっき踏んでしまった紙を差し出す。
瞬間、緑間の顔色が変わった。
「悪い、礼はまた今度する」
そう言うと、本を持ってそのまま行ってしまった。
間に合うのかな、あいつ。
ふと手元を見ると、黒ぶちの眼鏡があった。
忘れ物?
いろいろ考えていると青峰からメールがきた。
「遅いって…あいつ人に行かせといてこれかよ!」
重い足取りで図書室に戻った。
「高尾っち、おかえりー」
「おっせえよ」
「なんかいろいろあったんだよ!ってか別に普通だった」
「名前は?」
「緑間真太郎だったかなー」
持ってきた眼鏡をポケットにいれて、緑間のことを話していた。
そうこうしていると火神が戻ってきて、補習をしてないことにまた怒られて課題を増やされた。
怒られてるうちに下校のチャイムが鳴って、火神を無視して俺たちは校門まで競争した。
黒子は参加する気まるでなしで歩いてたけど。
「火神っち、本気出すなんて大人げないっスよ!」
「勝負に大人も子供も関係ねえんだよっ」
「だりいー疲れた」
「じゃあお前ら、気を付けて帰れよ!」
火神の声とともに黄瀬のばいばーい、で散らばっていく。
ってか火神、怒ってたこと完全に忘れてるよな。
俺だけ逆方向なのも悲しい。
帰ろうとしてふと気付く。
眼鏡返してない。
火神に渡しとけば良かったな。
今頃、寝てたとこで探してたりしないかな。
仕方ない、行くか。
俺は走って、さっき緑間と会ったとこまで行った。
「あ…やっぱ行た」
俺が来たのに気付いたのか、あいつもこっちを見た。
俺はかけよって、眼鏡を差し出した。
「ん、これ忘れ物」
「持っていてくれたのか。助かった…えっと」
「あ、俺、高尾和成。よろしく緑間先生」
「なんで俺の名前…」
「名札見たからさ」
緑間の白衣の胸ポケットを指差しながら言った。
ってか改めて思う
こいつ背が高い。
俺と結構差あるし、やっぱ顔も綺麗だった。
「あ、じゃあ俺行くわ」
「ちょっと待て」
「ん?」
振り向いた瞬間。
唇に温かい感触。
それはほんとに一瞬だった。
それが離れた後でも、俺はなかなか間抜けな顔が直らなかった。
ちょっと待てはこっちの台詞なんだけど。
何、今の。
驚いている俺に、緑間はふっと笑って言った。
「眼鏡預かってくれていたお礼なのだよ。まあまたきちんと礼はする」
言うと、まだ意味が理解できてない俺を置いて行ってしまった。
いやいやいや。
俺、あいつにキスされた?
眼鏡預かってくれていたお礼にキス?
いやいや、ってかその前に、
「俺、男…」
to be next…
.