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□無責任な愛の形
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好きだなんて伝えない。
だってもう、分かってるんだろうから。



【無責任な愛の形】



たまにふと思う。
俺はなんで、どうしてこの人が好きなんだろうかと。
そんなこと考えたところで、好きなのに変わりはないけど。
ねえ、センパイ。



「こら、黄瀬!」



はっとして我にかえった。
目の前には顔を歪めてむすっとした顔のセンパイ。
ああ、そういえば、今はミーティング中だったっけ。
でも周りを見渡しても、センパイ以外の部員の姿はここにはない。



「あれ、センパイ、みんなは?」


「帰ったぞ、お前が気持ち良さそうに寝てる間にな」


「俺、寝てたっスか!?」


「完全にな」



そうか、ミーティング中のセンパイの声が俺にとって眠気を漂わせる声だったから、ついつい寝ちゃったんだ。
完全に寝てたんだな。
ミーティング、何やったのか全然分からないし。
すいません、とセンパイに苦笑いをする。



「次寝たら黄瀬だけトレーニング増やすからな」


「気を付けるっス…」


「ったく、心得ろよ」



センパイは軽く笑って言った。
あれ、っていうかみんな帰ったのにセンパイだけいるってことは、もしかして俺待ってたのかな。
そう思って聞くと、キャプテンなんだから最後に出るのは当たり前だろ、と言った。
帰る準備をするセンパイを見て、俺も準備をした。
後でもう1回、ミーティングの内容誰かに聞こ。
センパイに聞いたら、寝てたのが悪いんだぞとか言われそうだし。



「センパイ」


「ん?」


「いや、なんもないっス」


「なんだよー」



言ってしまおうか。
そう思ったけど、やっぱり止めといた。
好きです、なんて俺には口に出すことはできない。
片想いとか、俺は絶対にしないと思ってたけど、やっぱするもんなんだな。
しかも報われもしない恋を。
センパイきっと、俺の気持ちに気付いている。
気付かないふりしてるだなんて、答えが出せないってことなんだろうな。
ああ、なんだかじれったい。
もうヤケになる。



「…センパイ」


「なんだよ?」


「好きっスよ」


「…知ってる」



ねえセンパイ。
本当は、俺が欲しい答え、分かってるくせに。
そうやって、分からないふりするんスね。
イスから立つとかたん、とかすれた音がした。
センパイに近付いて、センパイの肩に頭を預けた。



「ねえセンパイ」


「…なんだ」


「好きです、好き。どうして分かってるくせに、振り払うんスか、好きなんです、センパイ」



センパイは黙ったままで、何も答えなかった。
ただ俺の背中に手を回して、抱き締めてくれた。
センパイ、ごめんね。
俺も分かってる。
分かってるんスよ。
センパイがなんで答えを出せないのか、なんで振り払うのか、そんなの、好きだからちゃんとわかってるんスよ。
だって、だってセンパイには、



「黄瀬」


「…」


「…帰ろう?」


「…はい」



そう返事をしたけど、まだ体は動けなかった。
帰りたくない。
帰したくない。
あいつのとこになんて、行かせたくないのに。
センパイ、好きです。
だからお願い、



「俺を振って…」



自分でも驚くくらいに、小さく震えた声が出た。
目の奥が熱くなる。
泣きたい、泣きたい。
でも、泣いちゃダメだ。
センパイのことを思いきり抱き締めたら、センパイも抱き締め返した。



「なんでだろうな。俺はお前を受け入れることも、手放すことも、出来ないんだ」



泣きそうな声で言う。
前から分かってた。
センパイだって俺のことが好きなのだと
それに気付かないふりをしていたのは自分だ。
気付いたらセンパイは、他の奴のものになっていて、今さら俺がこうやって出てきたところで、何もない。
あの時に俺が別の行動をとっていたら、何かが変わっていたのだろうか。



「センパイ、好きです」



そう言って、センパイの目を手で隠して、キスをした。
本当、センパイも俺も、どうしようもなく最低なんだ。


end!!


シリアスが書きたかった結果。
後になって後悔する黄瀬は、何をしようもなくて、でもとりあえず誰にも渡したくないと思ってる。
センパイは、黄瀬の気持ちは嬉しいけど、自分には恋人がいてどうすることも出来ないけど、手放すことも出来ない。
つまり何が書きたかったというとシリアスです←



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