□恋をしてしまいました…。(前編)
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「…………綺麗な月…。」
その頃孫呉、諸葛亮は空いてあった部屋を借りていた。そこで窓から見える満月を眺めていた。

「……切なく輝く月……。」
切なく、そして儚く輝く月に魅了され、その月を眺めていると、後ろから扉を叩く音が聞こえた。
「…どなたでしょうか…。」
「俺ですよ、諸葛亮殿。」
「…綾統殿…?」
「どうぞ。」と諸葛亮が部屋に入るのを許すと、扉が開き、綾統が入ってきた。
「諸葛亮殿もお酒飲めるんでしょう?甘酒ではないので飲めますよ♪」と言いながら、綾統はお酒の入ってる徳利をフリフリと揺らすように見せた。
「………。」

「この国にってか三國に、徳利なんてありましたっけ。」
「まぁ細かい事は気にすんな、管理人が、この時代に使われてた食器とかがどんなのか知らないようだから(汗」
「ですね☆」
諸葛亮の言葉に、思わず苦笑する綾統。
「………。」
「……で、諸葛亮さん、あんた、どうすんの。」
「ん?」
「…周泰殿。貴方の顔に思いっきり書いてありますよ〜?『私は周泰殿が好きですv』っとね♪」
「(ブフォァッ!!)な!?」
「ちょっ、酒を吹き出さないで下さいよ、諸葛亮殿!!びっくりした(汗」
「どうして気付いたのですか…/////」
「だから、貴方の顔にそう書いてあるって言ってるじゃないですか。それに…俺は見逃してませんでしたよ?…諸葛亮殿が周泰の顔を見る時、たまに惚れてる相手と会話してる時の顔になってるとこ。」
「………!!」
「あんた、戦に出れば人を騙せるというのに、恋愛に関しては正直になるんですね。」
「…それは…その……。」
「…図星ですね、諸葛亮殿…。別に俺はからかったりとかしませんし、誰にも言いませんよ?」
「…………。」
綾統の言葉に安心したのか、諸葛亮は酒を飲みながら再び月を眺めた。
それに釣られるかのように、綾統も月を見る。
「…綺麗な月ですねぇ。」
と言いながら、綾統は諸葛亮の方を見る。…と、思わずぽかん唖然する。
「……そうですね…。」
返事をした諸葛亮の顔は…月光に照らされていて、とても綺麗な顔であった。
その顔に魅了されている事にハッと気付いた綾統は、思わず顔を少し赤らめてしまったので、それに気付かれないように今度は再び月を見る。
「……そ、そのさ、諸葛亮殿はあの月を見て、どう思いますかい?」
とりあえず、何気ない話でもしようかと考えた綾統は、諸葛亮に月の事をどう思うか聞いてみた。
「……あの月、周泰殿みたいではありませんか?」
「え」
諸葛亮の返事に、綾統は目を丸くする。
そして諸葛亮は酒を口の中に放り込ませながらその返事の続きを言う。
「…あの…寂しげに輝かせてるとこといい、けれど、それでも僅かな光でまわりを支えてるところ…。周泰殿は、あの無表情の中、どこか寂しさを、気付かれぬように顔に宿しているのですが……、それでも、孫家の方々を守るという事をしていらっしゃる。」
「……まぁ、そうでしょうか……。」
「あの月をどう思うかなど、人それぞれです。でも、私は本当に周泰殿の寂しいという感情と、あの月の光が、重ね合ったように見えて……。」
「ふーん、蜀の軍師なのに、一応他の国の人の気持ち分かるんだ。」
綾統の言葉に、諸葛亮は静かに笑った。
「…もしかしたら、周泰殿は、あの月は主のようだと言うのかもしれない。周りに輝く星達が、孫家を支えたる配下武将だと、自分もその一人だと言うのかもしれない。」
「俺達が星ねぇ……そうかもしれませんね。」
「…ですがその主は…孫権殿は、もしかすると、先程私が言った事と同じ事を言うでしょう……。」
「ええ、確かに孫権様、あの満月の光は、本当に周泰と同じ儚さを出しているぞ。と仰ってましたね。」
「周泰殿にとって、孫権殿がいらっしゃるからこそ、今の自分が居ると感じている、でも、孫権殿にとって、周泰殿がいらっしゃるからこそ、今の自分が居ると感じている。孫権殿は、周泰殿がいつも守ってくれているから、今こうして、自分は生きているのだと感じているでしょう…。」
「でも一方の周泰は、こんな自分を、孫権様が配下にさせてくれたから、今こうして、自分がいるのだと感じている。…そんな感じ?」
「ええ……、孫権殿には支えの周泰殿がいる。周泰殿には、自分を信じてくれている主がいる。想いは似たようなもの…。」
「諸葛亮殿だって、劉備殿に信頼されているでしょう?孫権様と周泰殿、そして劉備殿と諸葛亮殿。なんか似た者同士ですね。」
綾統がそう言うと、突然諸葛亮は俯いた。
「(あれ、傷付けてしまった…?)諸葛亮殿…?」
「…どうして私が、こんな事言い出したか分かりますか?」
「え、知るわけないっしょ。」
「…ですね。…でも、私がこんな事言ったのは……。」
「…?」
「…私の恋、叶う事などきっと不可能だと思いましたから……。」
「……諸葛亮殿……?」
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