□恋をしてしまいました…。(後編)
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「………?」
「……………。」
「…今誰か、私達を呼んだような…。」

誰かに呼ばれたような気を感じた諸葛亮は、大岩の前に立ち、その誰かに声をかけた。

「どなたですかぁー!…いや、今この状況を考えるとどなたでもいいか……。どなたか知りませんが、私達を助けてくださーい!!」

すると、諸葛亮の声が聞こえたのか、大岩の向こうから声が聞こえた。しかもその声の主は……

「おう、そう慌てるな、今除晃がお前らをそこから出られる物持って来てくれるから、それまでの辛抱だ。」
「……!!…夏候惇殿…!?」
「………。」

声の主が、夏候惇と分かり、安心のあまり体の力が抜け、その場に座り込んだ諸葛亮。

同じくその声を聞いて、周泰も安心していた。

「…良かった…、夏候惇殿…!」
「…………。」
「周泰殿、此処に閉じ込められてから大分時間が経ちましたが、漸く助けが来るのですよ!」
「………そうだな………。」
「…喜ばないのですか?」
「…………。」
「…!」

諸葛亮は周泰の体を見て気付いた。

周泰が自分の体を震わせている…。

「……周泰殿…?」
「……………。」
「…お聞きしますが……、ここに居るのが、怖いのですか……?」
「……!!」

図星だったのか、諸葛亮の質問に、周泰はびくりと体を震わせた。

「……何か…過去に、何かあって、ここが怖くなたのですか…?」
「……………。」
「…黙っていては、何も分かりません…如何なんですか…?」
「……水賊時代………、」
「…?」
「…………上の者達が…厳しすぎて……。」
「…お頭に無礼なことをしてしまった際、倉庫か何処かに閉じ込められてしまったのですね…。」
「…少年の頃に……。」
「…その恐怖が今も続いてる…ということですね…。」

少年で水賊時代の頃、水賊のお頭に色々と酷い目に遭わされ、それ以降、閉じ込められるなどを恐れてしまっている、いわば閉所恐怖症となってしまっている周泰を、諸葛亮は力を込めて抱きしめた。

「…ッ…/////」
「……有り難うございます…。周泰殿が…自分が、此処にいる事を恐れているというのに、この状況について行けず、動揺している私を宥めてくれて…。」
「……………。」
「…ですが、貴方は…己に厳しすぎます…、それ程此処を恐れているならば……遠慮なさらないで下さい…。」
「……呉の主の護衛をしている者が、人に世話を焼かせるなど………。」
諸葛亮の言葉に、周泰は遠慮の言葉を返そうとしたが…、

「…護衛とか、主とか、軍師とか、関係などありません。」
「…。」
「私達は人です。…相手に対するおもいを持ったり、仲良くなったり、喧嘩したり、後悔したり……恋愛も出来る人です。どんな仕事をしていようとも、どんなに生きていくべき場所が違っても、私達は、普通の人だという共通を持っています。様々な気持ちだって持っています。だから…貴方がここを恐れているというならば…人に頼ってください。…それがどうしても無理というならば…、私にだけ、遠慮なく頼ってください。」
「………。」
少し目を見開きながら諸葛亮を見る周泰のその目を、諸葛亮は見つめてこう言った。

「もう何度も助けられたり、守られたりもしていた私ですが、貴方が辛いと思っていたり、悲しいと思ったり、怖い思いをした時だったり、護衛であるが故、先に貴方を殺そうと考える奴らが現れたり…とにかく、自分を救って欲しいと思ったら、傍に居られる限りですが、私は守りたいのです。この前助けられた私…。今度は私が、貴方を助けたい、貴方を守りたいのです。」
「……貴殿…。」
「何故なら私は……。」


あなたをあいしているのですから……!!


「………!!」

諸葛亮の告白に、周泰は驚く。
然し諸葛亮は、喋り続ける。

「あの時、貴方の事嫌いと言ってしまいましたが、あの時の言葉は嘘だったのです!私が熱で倒れていた時、心配して部屋に来てくれたので、本当は嬉しかったのですが…、あの時突然、司馬懿殿が現れ、しかも彼に私の気持ちを言い当てられて…、動揺してしまい、思わず否定してしまい…とにかく私は、貴方を傷付けるような発言を……!!」
「…………。」
「貴方がどれほど傷ついてしまわれたか分かっていながら、私は……!!」
「諸葛亮殿…………。」
「…ですが、もし…、貴方が私を許さないと言うならば……、しかも男ではなく、普通に女性と愛せるような恋愛をしたいと思っていらっしゃるならば……、…私は……私は……!!!」

これ以上言葉が出て来ない…。
諸葛亮は周泰にどうしても謝りたい気持ちでいっぱいであったが、その先から声が出ず、代わりに涙が出た。
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