物語

□第十話「生贄」
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「全員いるか!!」
「はい劉備社長!全員そろいました!!」
「……今社長とか社員とか関係ないな…どんな呼び方しても構わんぞ趙雲。」
「そんな事より、早く諸葛亮達を助けに行くぞ!!!」

伏犠の叫びに頷くと、皆は早速幾台か停まってる車に乗った。

「……除晃……!!」
「大丈夫だ曹仁。…絶対助けに行く……。」
「…ところで、曹仁は何で、攫われなかったんだ?」

夏候淵の疑問に、袁紹は答えた。

「……張コウと除晃が攫われたあの時、動けなかった我々は聞いたが……曹仁は『守』を持つ者として狙われていただろ?…しかしその『守』は、『心』を持つ周泰で充分と言っていた……。」
「……!?」
「…張コウと除晃は……袁紹がかなり傷付いた所を見て、これ以上私や曹仁までもを傷付けてはいけないと判断し……自ら攫われるよう願ってしまいました……!!」
「……。」
「そういうとても人思いな所、生贄軍は持っているのに……俺達と同じ普通の人間として暮らしていけた筈なのに………どうしてあいつらを嫌っていた奴らも、あいつらを狙っていた奴らも………!」
「凌統………。」
「……貂蝉ちゃんは?ずっと見かけてないし、何処にもいないなんて………。」
「とにかく今は、攫われた皆を助ける事が先決だ!とばすぞ!!」

と、小喬の疑問を掻き消したようなタイミングで言った、運転席に座っている周瑜はアクセルを踏み、更にスピードを上げた。

他の車では、

「………………。」
「…孫堅、お主の子供達は…?」
「別の車に乗っている。……が……策と権………。」
「…………。」

周泰が遠呂智らに攫われてしまってから、孫策は全く口を開かなくなってしまった。

孫権が、周泰を見捨ててしまった事が原因か。

「……………っ。」

責任感を感じているからか、体を震わせている孫権は、乗っている車が研究所に着くのを只管待っていた。

「………周泰……!!」


*


研究所

「離せぇ!!貴様ら!何故俺達を!!?」
「大人しくしろ!!」
「……久し振りですね、捕らわれても尚、抵抗する生贄軍……。」
「そうだな、ほら、痛い目には遭わせん。だからこっち来い!」
「っ、離しなさい!!」
「……っ……。」
「……生贄軍さぁ〜ん……あまり人を待たせない方がいいぞぉ?……例え生贄軍でも、そうやって抵抗し続けるなら、容赦はしないんだからさ………。」
『……っ!?』

妲己の冷めた顔でこちらを向かれ、その顔にぞっとした生贄軍は、何事も無かったかのように大人しくなった。

「………いい子だね……。」

生贄軍が大人しくなったのを確認し、妲己は科学者達に、「早く遠呂智様の所へ行こう」と、顔で研究所の扉の方を差した。

それに気付き、科学者達は、生贄軍を連れてその研究所の中へ入って行った。
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