物語

□第十話「生贄」
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「遠呂智様!連れて来ましたよ!」
「………。」

遠呂智の前に差し出された生贄軍……。

遠呂智はその一人である周泰に近づき、

「……悲しいな周泰……せっかく許そうとした相手に、見捨てられてしまい……。」
「………っ。」
「……見捨てられたって……どういう事だ……!?」

馬超が尋ねると、遠呂智は彼を嘲笑うかのように見た。

「……妲己、こちらも完全に準備は良い様だ。」
「はい!では私達、復活するんですね!!」
「ああ………。」
「……復活……!?」
「その為にも、貴様らを捕らえた……。貴様らの持つ物が無ければ、我らはただの弱い生物として復活する……。」
「……その方が良かったんですけどね………。」

諦めてしまったのか、諸葛亮が溜息を吐くと、妲己は「アハハッ」と笑った。

「……生贄軍……この男は貴様らの元に返すぞ。」
「!」

ドサッ

「っ甘寧!!」

胡診が何か思い出したかのような仕草をし、生贄軍に言い放ち、そして投げたのは、未だ気を失っている甘寧。

「……何故起きない…?」
「………」
「遠呂智様が、私がこの肉体にとりつく前に先にとりついていた時、この肉体で凌統や関羽達と戦ったんだよ。その時に遠呂智様、そいつを長い眠りにつかせた。どんな事をしても、その人は起きないよ。」
『……!?』
「……最終準備に取り掛かるぞ、女狐。」
「はい、大蛇様♪」
「準備が完全に終わるまで、生贄軍は部屋にでもぶち込んでおくがいい。」
「…畏まりました。」

遠呂智の命令に、胡診は承知した。そして他の科学者と共に、生贄軍を閉じ込める部屋へ連れて行った。

「…あれ?董卓は?」
「………そこで眠っている。」
「?」

遠呂智が指を差した方を妲己も見ると、何故かその辺で眠りについている董卓が……。

「………とりつかれているから、別に運動不足とかはない筈……むしろ、遠呂智様に鍛えられた気がすると思うなぁ(汗」
「……あのような肉体にとりつくのは、もうたくさんだ……。」
「だから遠呂智様、魂の姿且つ、本来の姿でいたんですか。」
「…………。」
「…そういえば、生贄軍を匿っていた外の人間達、その生贄軍を助けに、仲間と共にこちらに向かって来ているみたいですよ?」
「……董卓の体を使って色々予測していたが……予測どおりだ……。」
「それと遠呂智様、生贄軍、あれで全員かと思ってましたが、よく見ると後一人、足りなくないですか?」
「…見たいだろう…?最後の一人くらい泳がせ、そいつもこちらに向かってきている。そして此処に着いた時…我らと対峙するその時……此処で己も生贄軍の一人と知らされる時の、戸惑う顔を……。」
「なるほど……正に、日本で言う所の、お主も悪よのぉ〜。ですね遠呂智様。」
「例えあのような性格でも、生贄というものに選ばれてしまえば、どんな人物も戸惑う……冷静な人物でも、能天気な人物でも、とにかく全ての人物も、だ。」
「ふふふ……外の人間達も驚くでしょうね、普通に接していた人が、実は生贄軍の一人と……。」
「………では行くぞ、妲己。」
「…はい、遠呂智様。」
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