物語

□第十四話「怒り」
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「……!」
「…どうかなさいましたか?遠呂智様……。」
「……奴……捕まったか……。」
「え……!?」

その頃研究所で、窓を眺めていた遠呂智は、仮面の男が悟空に連れ去られたのを感じ取った。

主の一言を聞き、諸葛亮は声を詰まらせた。

「………。」
「……何故行かせたのですか……!」
「諸葛亮…。」

諸葛亮は遠呂智の両肩を掴み、責めるように問うた。

「何故あの人を行かせたのですか!まさか遠呂智様、分かっててあの人を……!!」
「…………。」
「もし仮面の…じゃない…周泰が……彼が、外界の人間に捕まって、そして惑わされたらどうするのですか!あそこには仙人がいる……そして、左慈というおじいさんもいる!あのような連中のところに捕らわれては、彼が……!!」
「………諸葛亮………。」
「!?」

肩を掴む諸葛亮の手首を、遠呂智は掴んだ。

「………周泰は絶対惑わされぬ。」
「は!?何を……今回は…こう言っては申し訳ありませんが………、……今回は、遠呂智様の……失態です………。」
「諸葛亮、」
「……!」
「………仲間を…信じる事出来ぬとでも言いたいのか……?」
「……!!」

遠呂智のその一言に、諸葛亮の肩がびくりと震えた。

妲己が後ろから問うて来る。

「そうよ諸葛亮さん、だってあの人、信じる仲間を裏切るような人に見えるの?」
「……………。」
「裏切らない……といっても、敵の手下になりすましている時はどうだか分からないけどね?」
「妲己様の仰るとおりです。…諸葛亮、自分の仲間を裏切る事は絶対無いと思います。」
「…………。」

心配で仕方ないからか、諸葛亮は窓から景色を眺め、

「……周泰……。」

と、自分の仲間の名を、悲しげに呟いた。

「……………。」

*

その頃の外の世界、桃園の崖

「………女カ、伏犠、太公望、こいつが、仮面の男として孫権を襲おうとして、曹操と戦った男だ。」
「……そうか…。」
「そんな………どうして……!?」

仮面の男の正体を目の当たりにして、孫権達は驚いていた。

「………幼平………。」

仮面の男の正体が、周泰であった為である。

「……悟空の言っている事が本当であれば……、」

気を失っている周泰の傍に近寄りながら、呂蒙は呟いた。

そして、伏犠も呟く。

「うむ…、魂を入れ替えられておる……。」
「そしてその悪しき魂と、我らが作り上げた代わりの魂を入れ替える事が出来れば良いが………、」
「何か不安でもあるのかい?太公望。」

凌統が問いかけると、太公望は小さく頷いた。

「ああ、既に違う、しかも魂が悪しき魂であり、それが人間の肉体に入っていれば、我々仙人にとっては、人間の魂を取り出すという行為は簡単ではない。」
「ふーん。つまり、魂を入れ替えられるかどうかは、運次第っっていうの?」
「その通りじゃ、孫ふじ……」
「孫夫人はやめてください。」
「孫尚香。それに一度魂を入れ替えられた肉体じゃ。二回目以降は尚の事難しい……。」
「仙人の仰りたい事は、仙人にとっては遠呂智のような者とは違い、魂を入れ替える事は難しい。そして、その魂が遠呂智によって作り上げられた魂であれば、必ず違う魂に入れ替えること出来るとは言えない…という事か。」

陳宮が手短に言ったので、それに三人の仙人は頷いた。

「だが、かといって何もしない訳にはいかん。」
「そ、そうだな……頼む、女カ達……。」
「………。」

三人の仙人は、周泰を囲って両手を前に出した。

『……?』
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