物語

□第十四話「怒り」
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「…っ、すまん、周泰!!」
「…!?」

突如、女カは剣の先を前へ向け、その剣の先から縄のような光が現れ、それは周泰の手首に巻き付いた。

「!?」
「周泰!!」

もう片方の手首にもそれが巻き付き、驚く周泰は紐に……女カに引っ張られ、そして柱に背をぶつけられた。

その柱は……前に、夏候惇が科学者らに縛られた時に使われた柱…。

「くっ……離せ…!!!」
「周泰…!…女カ、どうして…!?」

女カの行為について行けず、孫権は女カに問い詰めようと彼女を見た。

女カは、紐を剣からぶちっと離すと、崖にぶら下がっている姜維を助けながら、この行為の理由を答えた。

「…こうするしか仕方が無かった……。もし縛り付けるか何かせねば、彼は絶対逃げる。」
「女カ……。」
「誰かの家に入れさせたりすれば、家の中で暴れる。そして、再び罪を犯す。………此処に周泰を隠す。この桃園の崖は、隠れ場所にも最適だ。」
「甘寧達が来たらどうするんですか?」
「…………。」

女カは暫し黙ると、周泰の腹の辺りにも縄を縛りつけた。

「………考えてる。」
「…えぇー?そこまで考えていないって言うのかよ……(汗」

女カの答えに、凌統は呆れてしまった。

「とにかくこの男の事は、我らに任せろ。お前達はもう家に戻った方がいい。」
「…分かりました……。」
「…………。」
「あ、英ちゃん!」

女カに言われ、それぞれの家に帰ろうとしたが、月英が周泰に近寄った。

「月英おねえさん?」

月英が何をしたいのかと、小喬は首を傾げる。

「……っ!」

周泰は月英の顔を見ると、歯を喰いしばりながら、彼女を睨んだ。

「………。」

するとニコッと笑った月英は、周泰を抱き締めた。

「げ、月英……!?」

周泰を抱き締めるので、蒋欽はそれに驚き、彼女を小さく呼んだ。

「……………。」

すると周泰の、力を込めていた腕が、ふぅ…その力が抜けた。

月英が離れると、抱き締められていた周泰は、眠りについていた。

「………そういえば月英さん、両親を失った悲しみが大きく、中学時代にその事で泣いてしまわれていた師匠を、今のように抱き締めて落ち着かせていましたよね。」

先程の光景を見て、諸葛亮が中学時代の時の事を思い出した姜維は、それを口に出した。

「あら、そうだったの?」と、記憶の無い月英は目を丸くしてそう言った。

「……月英、ちょっと残ってくれないか?」
「?分かりました。」

伏犠に言われ、月英は頷いた。

他の皆も、自分の家へ足を運んだ。

「…………。」
「…権兄さま!」
「……うん……。」

周泰をずっと見つめていた孫権だったが、妹の尚香に呼ばれ、家へ戻った。

「……………。」

孫権の姿を、太公望は見つめた。
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