物語
□第十四話「怒り」
4ページ/22ページ
「…っ、すまん、周泰!!」
「…!?」
突如、女カは剣の先を前へ向け、その剣の先から縄のような光が現れ、それは周泰の手首に巻き付いた。
「!?」
「周泰!!」
もう片方の手首にもそれが巻き付き、驚く周泰は紐に……女カに引っ張られ、そして柱に背をぶつけられた。
その柱は……前に、夏候惇が科学者らに縛られた時に使われた柱…。
「くっ……離せ…!!!」
「周泰…!…女カ、どうして…!?」
女カの行為について行けず、孫権は女カに問い詰めようと彼女を見た。
女カは、紐を剣からぶちっと離すと、崖にぶら下がっている姜維を助けながら、この行為の理由を答えた。
「…こうするしか仕方が無かった……。もし縛り付けるか何かせねば、彼は絶対逃げる。」
「女カ……。」
「誰かの家に入れさせたりすれば、家の中で暴れる。そして、再び罪を犯す。………此処に周泰を隠す。この桃園の崖は、隠れ場所にも最適だ。」
「甘寧達が来たらどうするんですか?」
「…………。」
女カは暫し黙ると、周泰の腹の辺りにも縄を縛りつけた。
「………考えてる。」
「…えぇー?そこまで考えていないって言うのかよ……(汗」
女カの答えに、凌統は呆れてしまった。
「とにかくこの男の事は、我らに任せろ。お前達はもう家に戻った方がいい。」
「…分かりました……。」
「…………。」
「あ、英ちゃん!」
女カに言われ、それぞれの家に帰ろうとしたが、月英が周泰に近寄った。
「月英おねえさん?」
月英が何をしたいのかと、小喬は首を傾げる。
「……っ!」
周泰は月英の顔を見ると、歯を喰いしばりながら、彼女を睨んだ。
「………。」
するとニコッと笑った月英は、周泰を抱き締めた。
「げ、月英……!?」
周泰を抱き締めるので、蒋欽はそれに驚き、彼女を小さく呼んだ。
「……………。」
すると周泰の、力を込めていた腕が、ふぅ…その力が抜けた。
月英が離れると、抱き締められていた周泰は、眠りについていた。
「………そういえば月英さん、両親を失った悲しみが大きく、中学時代にその事で泣いてしまわれていた師匠を、今のように抱き締めて落ち着かせていましたよね。」
先程の光景を見て、諸葛亮が中学時代の時の事を思い出した姜維は、それを口に出した。
「あら、そうだったの?」と、記憶の無い月英は目を丸くしてそう言った。
「……月英、ちょっと残ってくれないか?」
「?分かりました。」
伏犠に言われ、月英は頷いた。
他の皆も、自分の家へ足を運んだ。
「…………。」
「…権兄さま!」
「……うん……。」
周泰をずっと見つめていた孫権だったが、妹の尚香に呼ばれ、家へ戻った。
「……………。」
孫権の姿を、太公望は見つめた。