物語

□第十四話「怒り」
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研究所

「……周泰を捕まえたのは、おそらく私達生贄軍や夏候惇さん達、董卓、そして関平を、全員連れてこうとしているかもしれません。」
「………。」
「遠呂智様の仰った通り、我々全員で助けに行ってしまえば、今言ったように外界の人間達と仙人達は、我々を捕らえましょう。どなたか、研究所に残って欲しいのですが……。」

諸葛亮は椅子に座っている遠呂智の前で、仲間の周泰を助ける作戦などを、他の仲間達と共に話し合っていた。

「しかし……、何故外の人間達は、周泰さんを捕らえる行為をしたのでしょう…。甘寧、この前奴らを襲った際、こういう事をするとか奴らは言っていませんでしたか?」

張コウが甘寧に訊ねると、甘寧は目を赤黒くし、それに答えた。

「……何もだ。……考えさせろって頭を下げて頼んできやがったからその許しを与えてやっただけ……。……俺達を怒らせるような行為を考えたら許さねえって言ったのに………なんて奴らだ……!!」

この前襲った人間達を思い出し、甘寧は怒り顔で眉間に皺を寄せた。

「妲己様や遠呂智様には、こういう事になる事を予測していらしたようです。…聞けば、奴らの罠にあえてはまったとか。」
「あえて…?」

遠呂智を見つめながら諸葛亮が言うと、その「あえて」という言葉に、この場にいる者全ても遠呂智と妲己を見た。

「………今から呼ばれる者は…周泰を連れ戻すよう命じる者達だ…。」
『………。』

椅子から立ち上がった遠呂智は、自分の手下を呼んだ。

「……甘寧、張コウ、諸葛亮……。」
「「「!!」」」

呼ばれた三人は、遠呂智の前に出た。

「そして、我の腹の中にいる三人も出そう。…そして妲己……これで七人……。奴らは大勢で襲ってくる……。」
「…分かっています…。私達もこっそり、鍛えていたので……。」
「え…諸葛亮さん……聞いてないし!いつの間に強くなろうとトレーニング?していたの!?」

丁度いい事だが、しかしいつの間にしていたというので、それに驚く遠呂智と妲己。

その二人に諸葛亮はにっこりと笑い、

「だって……そうでもしなければ、貴方様方を守る事出来ませんから……。」

と答えた。

「……!」

諸葛亮の笑顔を見、戸惑う遠呂智……。

しかし戸惑っていなかったと誤魔化すように視線を逸らしながら彼らに命令を下した。

「……暫く様子を見てから、周泰を連れ戻せ……。」
「…分かりました。」

頭を下げ、張コウ達は承知した。

*

「…………。」
「…どうしたんですか遠呂智様?」

数時間後、窓を眺めているような状態で、ずっと上の空でいた遠呂智に、妲己は声を掛けた。

妲己の声が聞こえ、視線を彼女に向ける。

「あ、分かった。さっきの諸葛亮さんの笑顔が離れられないんだ!」
「…………。」

…図星だったか、遠呂智は溜息を吐き、俯いた。

「まるで惚れてしまったようなその態度……。…でも本当は、ああいう顔を向けられたの、あの伊達政宗さん以来だからでしょう?」
「………。」
「…それに相手は、自分の主を人質にとられて手下になってたのに、最終的に敵に回った軍師の子孫……。そんな人の笑顔見て、驚いているんでしょ…?」
「………うむ……。」

妲己に全てを言い当てられ、漸く肯定の返事を出した遠呂智。

すると遠呂智の隣に、妲己は座った。

「あの表情……本当に信用しているっていう笑顔でしたからねぇ……。あの笑顔を見ていた私も正直、『この人ほんとにあの諸葛亮さんの子孫!?』って思いましたよ。」
「………………。」
「三国時代の諸葛亮さん、私今でも嫌いだけど……、今の諸葛亮さん、あんっだけ!私達の事を信じているから……。……まぁ諸葛亮さんの子孫か、もしくは転生後の諸葛亮さんであるか分からないから、多分また私達を騙しているかもしれないだろうけど……。」
「……妲己………。」
「はい?」

遠呂智に呼ばれ、窓から見える景色から、彼の方に向けた。

「……我は……独りでも構わん……。」
「…?」
「……だが……貴様が独りになれば……どうする……。」
「……んーーー……。…そうですね…、昔、遠呂智様を復活させる為に利用しようとした卑弥呼の存在があってから、なんか独りじゃなくても悪くないなー…て思ってきたわねぇ…。あの子ほんっとに心から私達の事慕っていたし。」
「…………。」
「遠呂智様…貴方の場合は、政宗さんが貴方を慕っていたのに…まだ独りでも構わんのですか?」
「……………妲己……、」
「はい?」
「………命令だ…、我を裏切るな……。」
「………。」

何とも遠呂智らしくないその命令……。

その命令を聞き、目を丸くしていた妲己だが、

「……分かってますって、ご安心を♪」

ニコニコ笑い、そう言った。

「…………。」
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