□水賊(後編)
1ページ/30ページ

「奪うな……、奪うな……貴様…!!」
「……。」
「これ以上、私の……私の……!!!!」
孫権は、周泰を抱いた男に対する激しい憎しみにより、腸煮えくり返っている。周泰の落とした迅弧刀を手に取ると、それを鞘から抜き、刃先を男に向ける。
「……何だよ…。」
男はそれに動じず、ただ孫権を睨んでいる。
「…早く離れろ……、」「?」
「周泰から離れろ……!!」
「何?」
「さっさと幼平から離れろ!!汚らわしい貴様は、これ以上幼平に近寄るでない!!」
「…なんだと?」
「孫……権、様……。」
「そんけーさま…おこらないで…。」
憎悪に満ちた顔をする孫権を宥めようとする諸葛亮だったが、
「黙れ!!!」「ひっ!!」
「……私の大好きな幼平が、この汚れた男に抱かれたんだ、許せるわけない…。」
「…そんけーさま……。」
「はぁ!?汚れた男!?随分辛辣だなぁ!」
「……貴様は……、周泰の事どうなんだ…?」
「?…ああ、そりゃな、俺はな、周泰をおれのものにしたいさ!?」
「…その手段が、あの惨いやり方か……。」
「ああ、ああゆうやり方しねーと、周泰は首を縦に振ってばかりだからなぁ、俺のものになるのは嫌だって……。」
「………。」
「なぁ周泰、どうだ、おれのものになってくれるか?」
「………。」
男に問われた周泰は、何も言わなかったが、首を横に振った。
「……あんなことされてもそれでも嫌だってか………。」
「………。」
「ふざけんじゃねー!!」
バシンっと周泰は男に頬をぶたれ、起き上げていた上半身を再び倒す。
「…っ。」
「てめー生意気なんだよ!!餓鬼の頃から!!船から逃げようとしたり、頭達を詰ったり!!今のように、人のいう事聞かねー!!」
「………。」
「てめー、昔から大人しくしてりゃあ良かったんだよ!!水賊になっても、てめーは役立たずなんだから、、おれらの相手になってりゃあ良かったんだ!!」
「え?」
「おれもお頭達も、皆お前の事惚れてたんだよ!!抱きたくてしょうがねーくらい!!」
「…。」
「あんなに強いのに、おもちゃのようにほとんど動かねーで!?だったら、てめーはおもちゃになってりゃあ良かったんだつの!!」
「てめーみたいなとことん使えねー奴は、女のように抱かれてりゃあ良いんだよ!!!」
「………!!」
役立たず、使えない男、相手のおもちゃになってれば良かった、女のように抱かれ続けてれば良い……
それらの罵声は、周泰をとにかく傷つける言葉達……。
その言葉を聞いて、孫権はこう思っている…。

……奴らにとって、幼平は奴らに抱かれるだけのおもちゃに過ぎなかったと言うのか?
惚れたというのは口だけで、己の相手になってくれそうな人を……幼平を……戦場では使えぬが、抱くときは使えるおもちゃと……。
ただ抱きたいが為に、嫌がる幼平を…。



「……そんけーさま……?」
「ん?」
「……許せない。」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ