主
□恋をしてしまいました…。(後編)
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「……………。」
「…周泰殿ならば、この岩を登れるでしょう?」
「………いや、崖の方をよじ登れば一応………。」
山賊の手によって岩で道を塞がれ、閉じ込められてしまった諸葛亮と周泰。
その岩は、見上げてもてっぺんが見えないほど大きく、登るなど不可能である。…が、周泰曰く、岩の方ではなく、崖の壁の方をよじ登れば、(一応)越せるらしい。
「では、周泰殿だけでも此処から出て下さい。そして司馬懿殿達の様子を見て下さい。私は大丈夫ですから。」
「………。」
しかし、諸葛亮の言葉がまるで聞こえていなかったかのように、周泰はジッとしているままだ。
「…聞いていましたか?私は大丈夫ですから、はやくこの事を皆様に…。」
「…断る。」「へ?」
諸葛亮の言葉を拒否した周泰は、その場に座り込んだ。
「……無駄な体力など使いたくは無い……。」
「…何が無駄ですか、どなたかこの状況を知らせなくては、蜀の方々も、呉の方々もお困りになって………。」
「かといってこの場所に一人を置いて行くわけにはいかぬ………。」
「え…。」
周泰の言葉に、諸葛亮は目を見開く。
周泰は自分の言葉に羞恥を感じたのか、顔を逸らした。
「…そうです……か…。」
「………。」
そして諸葛亮もその場に座った。
「「…………。」」
沈黙が続き、目も合わせられない…。
が、諸葛亮はふと、周泰を見た。
「…………。」
「……。」
色々な人に言われたことを思い出す……。
『…あまり失言してしまうと、人によっては怒ってしまいますから、それはちょっと諸葛亮殿が……。』
『お前ら、己の気持ちをそう隠して、得したことあるか?していないだろう、寧ろ喧嘩になったという損な結果に…。』
「…………。」
…悪いのは、私だ…。
謝らなければ…。と思った諸葛亮であるが、しかし、なかなか口に出せず、ただ唇を震わせるだけ。
その時、
カラカラ…ッ
「!!(ビクゥッ!」
小さな音が聞こえ、それに驚いた諸葛亮は思わず周泰に抱きついた。
今の音は、小石が勝手に崖から転がって、その時に出た音である。
「…なんだ、小石の音か…。(ホッ」
「……軍師ならば軍師らしく、もっと冷静になれ………。」
「す、すみませ……!?」
諸葛亮は驚いている。周泰が、恐怖に怯えてしまった諸葛亮を落ち着かせるように、彼の頭を撫でているのだ。
「//////」
「……俺が居る……。」「!!」
「……落ち着け…。」
「え、…はい……。」
周泰の言葉に、諸葛亮は安心したのか、周泰の胸に顔を埋めた。諸葛亮のその行動に、周泰は顔を染める。
「……諸葛亮……殿…。」
「…………。」
「………。」
諸葛亮の何かを感じ取ったのか、周泰は溜息を吐き、再び諸葛亮の頭を優しく撫でた。
しかし、諸葛亮は周泰がその何かを感じ取った事に、気付いてはいなかった。