物語
□第十四話「怒り」
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「……幼平を…街を襲いに行かせた!?」
「分かっている……奴らの狙いは…………。」
ある日研究所で、遠呂智は周泰に、外の世界の街を襲いに行けと命令を下した。
それを承知した周泰が、その通りに街を襲いに行った後、甘寧は彼のしようとしている事を聞き、驚愕した。
しかし甘寧が驚愕する理由を、遠呂智は知らないわけではないらしい。
「だったら……だったら何で行かせたんですかい!?」
「………………。」
「…遠呂智!!」
「………………。」
「……くそっ!!」
黙り続ける遠呂智に痺れを切らしたか、甘寧は覇海を手にし、研究所から出ようとした。
が、
「……奴らの目的の付き合いもせねばならぬ。」
「……!!」
遠呂智の理由ともいえるその制止の言葉に、甘寧は足を止めた。
「……もし奴らの狙い通りになれば……当然周幼平を連れ出す……だが、かといって全員で、では、思う壷だ……。」
「……遠呂智……。」
「……………。」
「……遠呂智………いいか、もし救出に失敗したら……俺は!!」
途端、言葉を詰まらせた甘寧。
周泰の救出に失敗すれば……自分は……どうなるんだろうと…………。
そう思ったから………。
「……俺は………。」
「……蛇を舐めるとどうなるか……分かっているな?」
「………!」
その時、遠呂智の声が聞こえ、遠呂智を見上げた。
相変わらずの目つきだが、しかし………、
「……!」
「…………。」
「………その目………微かに安心しろって伝えてきてんのが分かる……。」
甘寧の言うとおり、遠呂智の目から微かに、安心して欲しいという気持ちの篭ったのを感じる。
「……………。」
甘寧はその目を信じ、コクリと頷いた。
「…………。」
*
「…………。」
数時間後、街の中の……数十件もの建物が、炎に包まれた。
その炎を、何処かのビルの屋上から眺めている、放火の張本人、仮面の男……。
「………皆………みんな、お前達が悪いんだ………。」
仮面の男はそう呟くと、次の地域へ行って此処と同じく火の海と化させようと、足を運ぼうとした。
だが、振り向いたその視線の先に…、
「………………。」
「………何だ………猿が………。」
「…仙人達から言われてね、お前を……、」
「………っ!」
猿の言いたい事が分かったのか、彼がまだ喋っている途中で、仮面の男は剣を振り、炎で出来た波を放った。
猿はそれが来ると予測していたか、ニィ…ッと哂い、キン斗雲に乗り、それをかわした。
キン斗雲を飛び回らせている猿…。
「………斉天大聖・孫悟空………。………俺の邪魔をする気か………。」
「だぁってお前、この時代の人間達目線から言うと、放火魔っていう犯罪を犯しているもん。もし警察官って奴らに見つけられたら、どちらにしろ捕まるんだろ?」
「…………。」
悟空はキン斗雲の上で、両手を枕代わりにして、横になりながら言った。
その態度に、仮面の奥で眉間に皺を寄せる仮面の男。
「………気に喰わん猿が……。」
「んー?だったら一発、俺をやってみろ?」
「…………っ。」
からかうように言ってくる悟空に、仮面の男は剣を鞘に納めた。
「…………。」
何も言わず、両手を上げた悟空。
「………っ!!」
走り出した仮面の男は、ビルの屋上の端まで走ると、飛び上がった。
そして、悟空の首を目掛け、抜剣し、素早く横切り。
「……もう剣の技なんか、見抜けるぜ?」
シュッとかわした悟空は姿を消した。
悟空の姿が見当たらず、辺りを見渡すも見つけられないので、仮面の男は丁度増したにあった家の屋根の上を着地しようとしたが、
「お前、ちゃんと後ろも見ろって。」
「……!!」
その時後ろから声が聞こえ、振り向こうとした途端、
仮面の男の視界は、真っ暗になってしまった。