キセキの軌跡と奇跡

□第1Q
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『What are you doing?
(なにしてるの?)』



「Are you interested in basketball?
(お嬢ちゃん、バスケに興味があるのかい?)」



『Yeah!(うん!)』




幼いころ、両親の都合で海外にいた私。
あてもなく歩いていると見つけたストリートバスケ。





かっこいい。




素直にそう思った。


私もやってみたい。



小さい頃の好奇心とは何とも怖いもの知らずなもので、自分より遥かに大きい人たちに声をかけていた。




「Do you try it?
(お前もやってみるか?)」



『Yes!(やりたい!)』




今思えば、よくあんな小さな私を入れてくれたなと思うのと、やっぱり小さい頃ってすごいなと少し関心する。



だけどこれが……
私とバスケとの出会いであり
かけがえのないものへと繋がるきっかけだった。






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「ラグビー興味ない!?」




「将棋とかやったことある?」




「日本人なら野球でしょー」




「水泳チョーキモチイイ!」





桜がひらひらと舞う


誠凛高校ではそれぞれの部活が新入生部員を確保しようと、躍起になっていた。





『わ〜〜すっごい人……』





空色の髪の毛がサラリと揺れる


散りゆく桜がよく似合う




呆れたような……どこか疲れた様子であたりを見渡す女性





「ねぇねぇ君!陸上部入らない?」



「サッカー部のマネージャーに興味ない!?」





そんな彼女が目立たないはずもなく、先ほどから勧誘をひたすら断り続けていた





『(……今日はもう帰ろうかな)』




本日何度目かもわからない溜め息を吐きながら帰路につこうとしたとき、聞き慣れた声が聞こえた





「ゆかさん」



『え?』




振り向けば
やっぱり見慣れた顔で
疲れはどこへやら自然と笑みが零れる




『てっちゃん!』




「お久しぶりです。
卒業式以来ですね」




『そうだね』




彼の名前は黒子テツヤ
彼女、ゆかとは中学の同級生だ





『……バスケ部に入ったの?』




「はい、今出してきたところです」




『そっか………』





ふわりと笑ったゆかの顔

儚げで悲しそうで
そんな彼女に思い馳せる





「………ゆかさんは入らないんですか?」




暫しの沈黙の後放たれた言葉に
ゆかはそっとまつ毛を伏せてふっと微笑んだ




『………まだ、考え中かな』




「そうですか……」






今の気持ちと同じように
桜の花びらがゆかの周りをヒラリヒラリと舞う

遠くに飛ばされて行く花びらを
どこか遠くを見るように、スッと目を細めて見つめる




『本当は、答えなんて決まってるんだけどね……まだ、私の覚悟が足りないんだ……』







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「お前にオレの何がわかるってんだよ!!」




『わかんないよ!!
けど……けど私は!』




「もういいわ。
わかるわけねぇよな!!
お前とはこれで終わりだ」



『あっ…!待って!
ねぇ待ってよ!』




いくら手を伸ばせど届かなかった
どんどん遠くなっていく背中に
これ以上声をかけることができなかった。



今でもあの時のアイツの
大きな背中が頭の中に焼きついて離れないままでいる。





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