キセキの軌跡と奇跡

□第2Q
1ページ/7ページ




昼休み





『てっちゃん!!』



ゆかは黒子に会いに
B組に来ていた




「ゆかさん」




ゆかのクラスはA組

黒子の隣だからそれほどの距離はないが、会いにこなければ会えないのだ





「ん?ってあーーーー!!!
オマっ!昨日の!!」




「火神くん、うるさいです」




『えっ………って……
Σ大我ーーー!?
せ、誠凛だったのね……』





そりゃ高校も聞くのも忘れてた
また会いたいとも思った
けどまさか同じ高校だとは思わなかったから正直びっくりだ





「お前こそ誠凛だったんだな」



『うん』



「お二人は知り合いだったんですか?」




「『昨日な/ね』」




「え?」




それからてっちゃんに
昨日の事を軽く説明し
少し他愛もない話をしているとチャイムが鳴ってしまったので、急いで教室に戻ろうと腰を上げる。




『じゃーね二人っ!』




「おう!」




あ、しまった。
ここに来た目的忘れるところだった

急いで引き返し、二人へと叫ぶ




『っとぉ、てっちゃん!
私今日、部活の見学に行ってもいいかな?』




「ん?なんだ松村、マネージャーになりたいのか?」




何も知らない火神からの
何気ない言葉…そりゃそうだ
彼は何も知らないんだから




『………まだ考え中なんだ』




「そうか…………」



そうやってえへへと笑った
彼女の笑顔に、出会ってまだ数日しか経ってはいないが


これが彼女のいつもの
笑い方なのだろうか、と疑問を感じた火神だった



だが、なぜか聞いてはいけない気がして、聞くことができなかった





中学から彼女を知る黒子が
それに気づかないはずはなく

ただ




「わかりました。
監督には僕から言っときますね」




とそれだけ言ってくれた





『うん、よろしく!!
…わっヤバい授業始まっちゃう……じゃあまたねっ!!』




忙しなく自分のクラスへと帰って行ったゆかの背中を見ながら先ほどから疑問に思ったことを黒子に聞いてみた





「……松村、何かあったのか?」




火神に問われた黒子は迷った





ゆかのことは
簡単に誰かに話してもいいような内容ではない
だけどきっと

チームメイトになる彼に
このまま黙っておくのも
あれだろうと、大まかな事だけを教えた





「………ゆかさんは、中学の時に起こったあることが原因でバスケをすることに少し抵抗があるんです」



黒子にそう言われたが火神にはピンとこなかった


なぜなら昨日、ストバスでバスケをしたときの彼女は
あんなにも生き生きとしていたから



バスケが大好きな自分が言うんだ
抵抗があるなんてのは心ではないのだろう





あるとしたらきっと……





「大好きなバスケをすることで 彼女は好きだった人を思い出してしまう……それが怖くてバスケに抵抗を感じてしまう……」




ポツリポツリと続けた黒子の言葉が静かに心にくる




正直オレは
好きなやつなんてできたことなかったし
ましてやバスケに恐怖心や抵抗などもったことなんてない。





ーーだけど、なぜかーー





「ゆかさんは少しずつだけど、またバスケを始め、戻ってこようとしています」





俺は経験したことのないことだ
俺の知らない葛藤なんだろう



ーーだけどなぜだかーー





「だから僕は、彼女が1日も早く大好きなバスケに戻ってこれるように、精一杯のサポートをするつもりです」





ーーこのまま、放っておけないーー





「ああ」




ーーもう二度と
彼女のあんな笑い方を
あんな苦しそうな顔を見たくないと思ったーー
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ