FAN FICTION

□『ホワイトデーの憂鬱』
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 三月も半ばだというのに肌寒い日であった。
「寒の戻り」ともいうのであろう冷たい風の吹く中でメリディアナ高校の生物学教師ルーカス・アマトは悩んでいた。
(給料の3ヶ月分は痛いがなんとかなる、彼女に似合いそうなものも見つけた。だが俺は彼女のサイズを知らない…)
目の前には宝飾店のショーウィンドゥ。
ルーカス・アマト3×歳、人生最大の危機であった。


『ホワイトデーの憂鬱』


 ルーカス・アマトがサイバーシックスからチョコレートをもらったのが先月のバレンタインデー、彼がホワイトデーのお返しに給料の三ヶ月分を使うと決めたのはその直後。
 それから一ヶ月彼女に秘密で事を進め今日に至ったのだが肝心の彼女のサイズを知らなかったのだからお粗末である。
手っ取り早く本人に聞けばいいのだろうが、それはプロポーズをサプライズで決めたい彼の道に反している。
 これでもロマンを愛する純情な男である。
(適当なサイズのを買って後から直してもらおうか、いやそれはロマンではない。いっそのこと誰かに聞いて……いや、でも誰が知ってるんだ、知っている奴がいるのならそれは男なのかそうなのかどうなのかもしかしたら俺は間男になってしまうのか云々かんぬんその他諸々)
 もうかれこれ一時間近く悩んでいた。


ふと、

「どうしたんだいルーカス、そんな難しい顔をして」

いつの間にか彼の横に同僚のエイドリアン・シーデルマンが立っていた。

「あ、いや、ちょっと」

「宝石に興味があるのかい?意外だな」

珍しく口ごもるルーカスにエイドリアンは両手を軽くあげ大げさに驚いてみせた。
苦笑いで応えつつルーカスはふとエイドリアンの指に目を留める。
彼の指は男としてはひどく繊細でしなやかそうだった。
ルーカスはおもむろにエイドリアンの手をつかんで……

「お前の薬指のサイズを教えてくれ」 



END?   屋根裏より再録・にげる

→おまけ・あるオーナーの受難


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