私のすべてをあなたに捧ぐ
□白い狐
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―ザザーン
『・・・人?』
『!
怪我してるのね。』
とある無人島にその女はいた。
真っ白な長い髪と金色の瞳を持つ女は儚く、消えてしまいそうな雰囲気を持っている。
そして、その女が浜辺で怪我をしたローを見つけた。
『・・・』
ーーボゥ
女が怪我の場所に手をかざすと白い炎がその傷を治した。
ーーーーーーーーーーーーーー
ーー?
なんだ?あたたかい
ベポ、か?
…いや待て、アイツはこんなに毛並みが良かったか?
「っ……?
!
狐、か?」
目を開けてまず飛び込んできたのは汚れることを知らないような白だった。
その白さに戸惑っていたがよく見るとそれは動物の尻尾であることがわかる。その尻尾の持ち主は狐のようだったが、それは普通の狐ではなかった。
その狐は普通の狐より随分とでかい上に、尻尾が九本あった。
その九本の尻尾で俺を包んでいたらしい。
ーー暖かいと思った理由はこれか
その狐は俺が起きたことがわかるとその金色の瞳で見つめてきた。
どうやらいきなり襲ってきたりはしなさそうだ。
「…。」
狐が危険でないとわかりその周りを見渡してみる。そこでわかったのはここがどこかの洞窟であるということだった。
俺はひとまずこの場所のことを知るために起き上がりその洞窟を出ようとした。
が、そこで違和感に気づく。
「……?
!!
傷が、ない?」
ーーおかしい。
俺はあの時確かに怪我をしたはずだ。
咄嗟に急所は外したが、避けきれなかったはず…
じゃあ、なぜ?
クイ
「!」
俺が傷のことについて考え込んでいると、さっきまで微動だにしなかった狐が俺の服の裾を引っ張った。俺がそちらに意識を持っていくとそこには果物がいくつか置いてあった。
狐はそれを俺の方に転がした。
「…。」
自分がどのくらい眠っていたかは知らないが、腹は減っていた。だが、その果物に毒がないとも限らない。
俺がそれを食べるか悩んでいると狐がそれを食べ始めた。
まるで
毒などないと俺に教えようとしているかのように。
「…」
果物に毒がないとわかった俺はそれを食べた。そして、食べ終わると洞窟を出ようと再び立ち上がった。
今度は狐もついてくる。
危険はないようなのでそのままにさせておくことにした。
ーーーーー
「…無人島のようだな。」
この島を歩いてわかったことは、ここが無人島であり冬島であるということだけだった。
「チッ
アイツ等は大丈夫だと思うが…
さて、これからどうするか。」
クイ
「!
どうかしたか?」
島を歩いている間ずっと俺について来ていた狐はどうやら人の言葉がわかるようだ。
そいつは俺の裾を引っ張り先ほどの洞窟の方へ歩き出した。多分、もうすぐ夜になるので洞窟に戻ろうといっているのだろう。
普通狐がそんなことを思うはずがないのだが、この狐は何故かいつも俺のことを気遣っているような雰囲気を見せた。
初めの果物もそうだが、島を歩いている途中もこの狐はさりげく安全な道を俺に歩かせるのだ。挙げ句の果てには、湖や先ほどの果物がなっていた木の場所まで俺を誘導したりもした。
そんな狐に警戒は必要なかった。
そして、洞窟についてからもコイツは冷たい風から守るかのように座った俺をその尻尾で優しく包んだ。
正直、寒い地方で生まれ育った俺にとってそこまで堪えるほどの寒さではなかったが、不快ではないのでやりたいようにさせた。
毛並みのいい尻尾のおかげか、俺の意識はすぐに沈んでいった。
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