私のすべてをあなたに捧ぐ
□再会
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〜ヒロイン視点〜
私が男を助けてから、数日が経った。
この男、トラファルガー・ローは最近名を上げてきた海賊なので私も知っている。海賊なのでいい話は聞かないが、この人はそこらへんの略奪ばかりしているような海賊とは違った。
この人は私にクルーの話をしてくれた。その最中のローさんはとても優しい目をしていて、いかにクルーのことを大切に思っているのかがわかった。
言葉には出さないが心配しているのだろうことも
『…』
隣で寝ているローさんを見つめる。
――化けギツネにしか見えないであろう私を対等に扱ってくれた。
それに
彼が嬉しそうに話すクルーや夢の話に惹きつけられた。
――初めに助けたのは私だけど、ローさんと過ごすうちに私もどこか救われていた。
この姿の私に優しさをくれた貴方だから
貴方の夢を応援したいと思わせてくれたから
だから
私は貴方を自分の居場所へと戻してあげたい
『…待っていてください。
もう少しで、クルーの人たちに会えますから。』
ぐっすり寝ているローさんを残して、そっと洞窟を抜け出した。
―――――――――――――――――――
ーゆさゆさ
「…ん゛」
『コンッ』
「…ああ、お前か。
俺を起こすなんて珍しいな。
どうかしたのか?」
もう朝というより昼に近い時間に、俺は起こされた。そしてどんなに寝起きが悪くともこの数日間この狐が俺を起こしたことなどなかったから不思議に思った。
――そう、あれから数日が経った。
俺はコイツのおかげで何不自由なく過ごせているが、アイツらは大丈夫だろうか?
敵にやられたりはしないだろうが、いつまでも船長が不在なんてのはまずい。
だが、この島の正確な位置もわからねぇんじゃあ手の施しようがねぇし、俺は能力者だ。
海に嫌われているこの身じゃあどこへも行けねぇ。
まさに八方塞がりな状況に正直俺は焦っていた。
「…」
ークイッ
『コンッ』
「!フッ
そうだな。
悩んでもしょうがねぇか。」
俺が考えていることがわかったのか、狐は俺の服の袖を引っ張った。俺を見つめるその瞳はまるで大丈夫だと言っているような気がした。
――本当にこいつには助けられてばっかだな。
俺は狐の頭を撫でながら笑った。
不思議とこの狐といると心が落ち着いた。
もし、この島から出られることになったら、俺はコイツも連れて行くつもりだ。
コイツが何なのかはわからねぇが、そんなことは別に構わねぇ。俺のクルーなら反対もしねぇだろうしな。
まあ、もしその時にコイツ嫌がるようなら多少手荒になるかもしねぇが…
「ククッ
あまりそんなことはしたくねぇんだ。だから、暴れてくれるなよ。」
『?』
「ククッ」
―――――
あれから俺は、俺をどこかへ連れて行こうとするコイツについて来ていた。
初めに目が覚めた時以外にコイツが俺をどこかへ連れて行こうとしたことはなく、珍しい行動に俺も少し困惑していた。
「なあ、今日はどうしたんだ?」
『…』
俺がそう問いかけるとコイツは一旦止まり俺の目をじっと見てきた。
だがまたすぐに前を向いて歩きだす。
もう何を言っても無駄だとわかったので俺も黙ってついて行った。
―――――
『…』
「!砂浜じゃねぇか。」
到着した場所は砂浜だった。
「なあ、ここに何かあるのか?」
『…』
―クイッ
「ん?
あっちがどうかし……!!?
あれはっ!!」
狐が指し示した方向には黄色い潜水艦があった。
それはまさしくハートの海賊団で、ローの船だった。
ローは潜水艦に近付く。
「おいっ上陸したらまずは………!!!!
キャプテン!!」
船から下りて指示を出そうとしていたペンギンがローに気づいて大声を上げる。
そしてそれによってハートの海賊団のクルーたちがローの回りに集まってくる。
「キャプテン!!」
「無事だったんッスね!」
「心配したんだよ、キャプテン!!」
「…っ
お前らっ!!」
駆け寄ってきたクルーたちに、ローの表情もどこか嬉しそうなものとなった。
『…』
狐は暫くその場でローたちを見つめていたが、やがて静かにその場を去って行った。
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