長編連載

□決めあぐねてるみたいだから
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 ガチャッ、

「悪い、日直で長引いた」

「「笠松センパイ(さん)!!」」

 キタキタキタキタ!
 涼太と先を争うように、かわいいかわいい笠松さんの元に駆け寄る。涼太が『顔は殴らないでくださいっスよ〜!』とかなんとか情けなく言っていたが、俺は気にしない。モデルとかいうイケメンの顔など、とりあえず殴っておくに限る。

「怜っちだって十分美形じゃないっスかぁ!」
「笠松さん、日直お疲れ様です。今日は監督出張だし、問題ないですよ」
「あれ、無視?」
「そうか、ありがとな、怜」

 そう言った笠松さんが、そっと頭を撫でてくれた。これというのもバスケ部に入ってから、

『俺は誉められると伸びるタイプなんです! 特に頭撫でられると!』
『じゃあオ(レ)が撫でてや(ろ)うか?』
『ごめん早川さん黙ってて!! とにかく頭撫でてください!』
『わ、わかった……』

 と、熱弁を繰り広げた結果だ。それ以来、練習の前と後。それから誉めてもらえるときは、あやすみたいに頭を撫でてもらえている。え、涼太がエライ顔でこっち見てるって? うん知ってる。
 まあ、涼太が笠松さんに惚れてるのは見てりゃわかるし、笠松さんも深層心理はどうあれ涼太を気にしてるみたいだし。こりゃ2人がくっつくのも時間の問題だな〜、なんて最近は思っている。しかし帝光時代はずっと青黄で妄想してたせいか、なんか涼太攻めが新鮮なんだよな〜。あ、笠松さんは当然右側固定で。

「じゃ、オレ着替えてくるわ」
「はーい」
「いってらっしゃいっス!」

 スポーツバッグをかつぎ直した笠松さんが、踵を返して更衣室に向かう。その背中が見えなくなると、涼太がストンと俺の横に腰を下ろした。なんだその顔、イケメンが台無しだぞもっとやれ。

「怜っち、オレの笠松センパイとらないでほしいっス」
「第1に。笠松さんをモノ扱いすんな。第2に。笠松さんはみんなのアイドルだ。第3に。笠松さんはそのうちお前に惚れるから安心しろ」
「第1はスンマセン。第2は同感。第3はありがとうございますっス」

 さっきまで唇を尖らせていただだっ子はどこへ行ったのだと言いたくなるような、にぱっとしたヒマワリのような笑顔を向けてくる涼太。イケメンだなクソッと思ったので、とりあえず目潰しをくれてやろうとチョキを作ってから突いた。

「あああ危ないじゃないっスか!!」
「ちっ……次は当てる」
「かっこいいけど怖いから!」
「つかお前着替えて来いや! 練習始まるぞ!」

 顔はやめろと泣き叫ぶので、それではとばかりにボディに一発入れた。『ぐほぅえぁ』とかいう無様な叫びとともに、涼太の体が後方に倒れる。ざまぁ。ま、笠松さんが涼太に惚れるなんて保証はないが、個人的にそうなってほしいからな。
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