Civil Strife
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「みー…」
いつものように学校へ行く道を歩いていると、路地裏に段ボールが置かれており、中から弱々しい子猫の悲痛な鳴き声が響く。
いわゆる捨て猫なのだが、それを拾う者などいるはずもなく、助けを求める子猫の声が次第に弱まっていくばかりだった。
「…大丈夫?」
が、そんな哀れな子猫に目を向ける少年が1人。彼は段ボールの中から子猫の影が見え、しゃがんでそれを覗き込む。黒猫、白猫、二匹の子猫。少年の顔を見て極端に震え始める。怖がっているのだ。
「……」
状況は察して、少年は肩から鞄を降ろして中を漁った。そして鞄から出した手にはビニール袋に入った牛乳と菓子パンが1つ。
「お腹、空いたでしょ?」
子猫のそばにあった空の皿に牛乳を入れ、菓子パンも包装を取ってそれぞれ子猫の目の前に置いてやる。
余程衰弱していたのか、子猫達は警戒する暇もなく飛び付いた。貪るようにそれらに食いついたのだ。
「帰り…また寄るね」
その様子を、本当に嬉しそうな顔で眺め、少年はそこを後にしたのだった。
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「へぇ…で、その捨て猫に自分のお昼あげちゃったんだ」
パックのジュースのストローを口に入れながら、チヨは目の前で足を組んで窓の外を見ている少年・ユキムラを同情する目で見やる。その視線に気づいたのか、ユキムラは心底嫌そうな顔をする。
「なんだよっ庶民が神をそのような目で見るんじゃねぇよ!!」
「まーたそんなコトいって…」
「そんなコトとは何だ!!」
ユキムラは、彼自身は厨二病では無いのだが、兄以外の人を前にすると発言が厨二臭くなる。昔は普通の子供だったのを幼馴染みであるチヨは分かっている。とある一件により彼が変わってしまったのだが、その一件についてはまた別の話で。
「…ったく、ほら、アタシのゼリーあげるから」
お腹が空いている筈なのに強がる幼馴染みに1つ溜め息をついて、スプーンと一緒にゼリーを手渡す。
「いらねーよ」
予想通り突き返してくるので返しの一言。
「神様への献上物です」
「……あっそ」
頭を低くしてゼリーを高くあげると、ぶっきらぼうにそれを受け取ってくれる。
フタを取り、肩を小さくしながらちびちびとゼリーを食べ始める彼は、小動物の様で少し可愛げがあった。
「神様、お礼は?」
なんだか面白くなってきたチヨは、ユキムラをからかってみる。
お礼と言われ、その大きく赤みがかった瞳をあちらこちらへと動かしながら最終的には頬を真っ赤に染めて小さな声でひとつ。
「……ありがとう」
「どういたしまして!!」
少し変わってるけど可愛い幼馴染みを、チヨは気に入っている。
「…ユキムラ、背、縮んだ?」
「うっさい!!お前の背の高さが異常なんだよ!!」
男なのに女子より小さい彼を教室に置いて、チヨは自分の教室に帰って行く。
「あのばか」
そう呟いて、ユキムラはまた一口、ゼリーを口の中に放り込んだ。
あとがき
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