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□風邪
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「体調はどうですか?」
「うん、直斗のおかげで大分楽になったよ」
直斗が作ってくれたおかゆは、美味しかった。
その後、直斗は瀬多の体を拭いたり、着替えを手伝ったりと、甲斐甲斐しく看病をしてくれた。
「直斗……今日は来てくれてありがとう。もう遅いから、そろそろ帰った方が良い。俺の体調がもう少しよければ、駅まで送ってあげたかったんだけど、今からタクシーを呼ぶよ」
「いえ、その必要はありません。今日は、泊まります。総司さんが心配ですから……」
「でも……」
「大丈夫ですよ。お祖父ちゃんに連絡しましたし、お祖父ちゃんもその方が良いと言ってくれました……」
「……悪いな」
「いえ、総司さんが風邪で苦しんでいるのに、こんな事言うのも何ですが、僕は少しでも長く貴方の傍にいられる事が嬉しいんです」
「うん、俺も嬉しい。こんな事だったら、最初から直斗に連絡しておけば良かったな」
「そうですよ!」
そう言うと直斗は、瀬多に抱き着いた。
「直斗?」
「早く、卒業して貴方と一緒に暮らしたい。……今回の事でより強くそう思いました。一緒に暮らしていれば、貴方の体調の変化に気づけたかもしれない。それに、僕以外の人が貴方の看病していたらと思うと……嫌です」
「それはないから」
「そんなのわからないじゃないですか!……総司さんもてるから……」
「わかったよ、直斗。何かあったら、必ず直斗に一番に知らせるから」
「……約束ですよ」
「うん……直斗も何かあったら、俺を呼んで。すぐかけつけるから」
「はい」
風邪がうつるかもしれないのに、直斗は瀬多の傍を離れようとしなかった。
「うつっても知らないよ」
「総司さんの風邪でしたらいいですよ。それに僕が風邪をひいたら、総司さんが看病してくれるんでしょ?」
「直斗の看病をするのはいいけど、もしそうなったら、白鐘さんと薬師寺さんに俺が怒られるんだけど……」
「ふふ、一緒に怒られてあげますから、いいでしょ?」
その日、お互いの手を握りながら一緒に寝た。
たまには風邪も悪くない。
初めてそう思えた日。
END