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□Summer vacation
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Summer vacation

「…旅行ですか?」
「ああ…直斗の都合が良ければ一週間」
「…結構長い期間ですね。ちょっと、待ってて下さい」

僕は、手帳を開きスケジュールを確認する。

「えっと…この日から一週間は大丈夫です。…どこへ行くんですか?」
「辰巳ポートアイランド」
「ああ…確かにあそこは大都会ですから、遊ぶ所はいっぱいありそうですが…」
「うん…修学旅行ではあまり見て回れなかったから」
「…受験勉強はいいんですか?」
「参考書と問題集も持って行って、空いている時間に勉強するから大丈夫だよ。…どうかな?一週間、直斗と二人で過ごしたいんだ」 
「…僕も貴方との時間が欲しいです」

こうして、僕は夏休みの一週間先輩と辰巳ポートアイランドへ旅行する事になった。

そして、当日。
宿泊先は、ホテルではなくウィークリーマンションだった。

「一週間直斗とゆっくり過ごすにはこれがいいかなと思って…それに同棲気分も味わえていいだろう?」
「ど、同棲って…もう…」

僕達が一週間過ごすマンションには、電化製品や家具が一通り揃っていて、一応ワンルームなんだけど、それにしてはかなり広く
ベッドを二つ置いてもまだ余裕がある。
管理会社の人が簡単な入居説明をして帰った後、僕達は荷物を置いて、街を散策する事にした。

「まず、お昼食べようか。俺、行きたい所があるんだ」
「良いですよ。先輩にお任せします」

やってきたのは牛丼屋海牛。

「前に真田さんが『海牛の牛丼は美味いぞ』と言っていたから、食べてみたかったんだ…男性客が多いけど大丈夫?」
「平気ですよ。男装していた頃、こういう所で一人で食事した事がありますから…桐条さんもここの牛丼食べた事があるみたいですよ」
「へぇ、意外と桐条さんもジャンクフードイケる口なんだ…桐条さん達元気にしているかな。そういえば、この近くに住んでいるんだっけ?
今度、会いに行こうか?」
「いいですね。行きましょう、あ、来ましたよ」

真田さんの言う通り、ここの牛丼は美味しかった。

「愛家の牛丼と良い勝負かも…」
そう言って、先輩がおかわりする程。
…里中先輩がいたら、喜んで食べていただろうな。

海牛を出た後、商店街で食材を買い込んだ。

「なんか、新婚さんみたいだな」
「もう…またそんな恥ずかしい事を…」

それから、マンションに帰宅し、先輩がトランクから参考書と問題集を取り出し勉強を始めたので、僕も夏休みの宿題をした。
…こうやって、二人きりで勉強するのも久々だな…いつもよりはかどった気がする。
一段落ついて、二人で少し狭い台所に立って夕食を作って食べた後、長時間の移動でお互い疲れたのか、その日はお風呂に入って、早めにベッドに入り寝た。

二日目。

先輩より早く目が覚めた僕は、先輩の為に朝食を作ろうと台所に立った。
彼と離れてから、僕は自炊をするようになった。
まだ簡単なものしか作れないけど…いつか先輩に手料理を食べさせてあげたいなと思って、頑張って練習した。
今日は、トーストにチーズオムレツとベーコン、サラダ、コーンポタージュにしよう。
いつも作っているメニューだから大丈夫だと思うけど…先輩食べてくれるかな…。
失敗する事なく綺麗に焼けたオムレツを皿に移した時、「直斗?」と僕を呼ぶ声が聞こえた。

「先輩、起きました?」
「んー」
「あともう少しで朝食できますから…っ!?」

ベッドに近づくと、いきなり腕を引っ張られて…気が付けばキスをされた。

「…おはよう」

唇が離れると、彼はにっこり笑う。
そして、ベッドから出て、呆然とする僕を置いて、バスルームへ行ってしまった。

「…先輩のばか」

不意打ちのキスに彼の笑顔を近い距離で見たせいか、心臓がドキドキしている。

「あ、ちょ、朝食の準備しないと…」


"なんか、新婚さんみたいだな"

…昨日の彼の言葉を思い出してしまった。
確かに彼からおはようのキスをされたり、彼の為に朝食を作っている今の自分は…お、奥さんっぽいかも。
…なんか夢みたいだ。

「美味しいよ、直斗!」
「ほ、本当ですか…良かった」
「いつ俺の所にお嫁に来ても大丈夫だね」
「な、なに言っているんですか!」
「俺は本気だよ」
「もう…」

彼は僕が作った朝食を嬉しそうに食べて、おかわりもしてくれた。
頑張って、練習して良かった。
…今度は何を作ってあげようかな。

夜は、クラブエスカペイドに行こうとなったので、昼食は家で食べて、後は夕方までお互い勉強をした。
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