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□貴方だけのメイド
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僕が八十神高等学校へ転校して、3年目の文化祭。
高校生活最後の文化祭だからか、やる気のなかった1、2年の時と違い、3年生クラスは、皆気合いが入っていた。

僕も思い出に残る文化祭にしたいという気持ちは強かった。
それに、先輩に会える!

「もうすぐ文化祭だろ?今年も行くから!」
昨日の電話での彼の一言を思い出し自然と笑みがこぼれた。


この時までは……。


「投票の結果、うちのクラスは、メイド喫茶に決まりました。では、二週間後の文化祭を目指して、がんばりましょう」

学級委員長の言葉に歓声をあげる男子生徒に対し、女子生徒は不服そうな顔をしていた。
通常、クラス出展は、部活動に所属していない生徒が参加するものだ。
部活動に所属していない女子は、当日絶対にメイド服を着て接客をしないといけない。
たくさんあった出展候補の中で、これだけは絶対外して欲しかったのに、願いは叶わず、僕は自分の不運を嘆いた。


そして、文化祭当日。


「ほら、直斗君!″おかえりなさいませ、ご主人様″って言わなきゃダメじゃない!」
「む、無理です」

黒いワンピースにフリルの付いた白いエプロン。頭にはフリルの付いたカチューシャ。
このひらひらした短いスカートのメイド服を着て、人前に立つだけでも恥ずかしいのに……あのセリフを言うなんてもっと恥ずかしい!!

「直斗君、凄く可愛いよ!自信を持って!!」

……仕事柄、そういう衣装を着慣れている現役アイドルの久慈川さんが、それをやったら似合うし可愛い。
メイド喫茶が繁盛しているのも、積極的に客寄せをしてくれた彼女のおかげだ。
教室は、既に男性客で埋まっており、その大半は久慈川さん目当てだ。
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