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□バレンタイン前日
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今年のバレンタインは、恋人である先輩だけに、手作りチョコを渡そうと思い、ジュネスの食品売り場で買い物をしていたら、彼の従妹である菜々子ちゃんに会った。

「あ、直斗お姉ちゃん!」
「こんにちは、菜々子ちゃん。お買いもの?」
「うん!今日は、お父さんが早く帰ってくるから、お父さんの大好きなたくあんを買いにきたの」
「そうなんだ。きっと、お父さん喜ぶよ」
「えへへ、直斗お姉ちゃんは、チョコの材料を買いにきたの?」
「えっと……」

僕の持っているかごの中には、板チョコ数枚とココアパウダー、アーモンドなど、チョコ菓子に必要な材料が入っている。

「お、お兄ちゃん達にあげようかなっと思って……」
「そうなんだ!お兄ちゃん達、きっと喜んでくれるよ!」

本当は、お兄ちゃんだけにしかあげないんだけど……。
ちょっと、気恥ずかしくて嘘をついてしまった。

「菜々子もね……お兄ちゃんに手作りチョコをあげるの!」
「菜々子ちゃんって、お菓子も作れるんだ……すごいなぁ」
「ううん、お菓子は一人で作るのは、初めてだよ。いつも、お兄ちゃんと一緒に作っていたけど……お兄ちゃんにあげるチョコは、菜々子一人で作りたかったから、千枝お姉ちゃん達に作り方教えてもらったの!」
「え……」

そう言って、無邪気に笑う菜々子ちゃん。
……正直、あの三人の料理の腕は信用できない。

それは、クリスマスの日に身をもって知った。

まず、料理本を見ない上に味見もしない。
材料選びから、もうつまづいているのだ。

瀬多先輩と花村先輩は、三人の手料理を食べて、死にかけたらしい。
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