P4(short)


□ファーストキスの味
1ページ/3ページ

自動販売機で飲み物を買おうと、小銭を入れた後、商品を見ていたら、リボンシトロンが目に入った。




2012年12月 体育館

「お疲れ様です、先輩。これ、差し入れです」

彼が所属しているバスケ部の練習が終わって、彼が1人なのを見計らって僕は、リボンシトロンを彼に渡す。

「直斗!?まだ残っていたのか?」
「ええ、先生のお手伝いをしていたら遅くなってしまって……先輩もまだ学校に残っていたら、一緒に帰ろうかなと思って待っていたんです」
「そっか、せっかくだから、ここで少し話さないか?皆、もう帰っていないから……」
「はい!」

僕も彼ともう少し一緒にいたかったから、彼のお誘いを承諾した。

「先輩は、炭酸がお好きなんですか?よく飲んでいますよね」
「うん、部活とかバイトで疲れている時とかすっきりしたい時とかに飲みたくなるんだ」
「実は、僕、炭酸って飲んだ事ないんです」
「そうなのか?じゃあ、ちょっと飲んでみる?」

そう言って先輩は、さっき口にしていたリボンシトロンを僕に差し出す。
こ、これって間接キスになるのでは……。

「直斗?」
「あ、あの……その……」
「……あっ、そっか……ご、ごめん」
「い、いえ、あの……」
「…………」
「…………」

お互い顔を逸らし、しばしの沈黙。

どうしよう……何か喋らないと……。
気まずい雰囲気になって困っていたら、先輩が僕の手を握ってきた。

「……直斗」
「は、はい」
「……キスしていい?」
「はい……って、えっ!?」
「ごめん……急にそんな事言われたら、困るよな。でも、俺……ずっと前から、直斗としたいと思っていたんだ。本当は、自然にさりげなくしたかったんだけど……カッコ悪いな俺……」
「そ、そんな事ありません!僕も……あ、貴方とキスがしたいです」

いきなり彼からキスがしたいと言われて、恥ずかしさと嬉しさが混ざり合って、心臓がドキドキしている。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ