P4(short)


□これからも貴方と
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「「出来た!」」

今日はホワイトデー。
お菓子の材料が入ったジュネスの袋を持って、突然僕の家に訪ねてきた先輩と一緒に台所に立って、カップケーキを作った。

焼き上がったケーキを先輩が、オーブンから取り出すと甘い匂いが広がる。
ちゃんと膨らんでいて、焦げ目もなく、綺麗なきつね色に焼けたケーキは、とても美味しそうだ。
早速、紅茶を淹れ、二人で焼き立てのカップケーキを一口頬張る。

「美味しいです!」
「良かった…お菓子はあまり作らないから、上手くできるか心配だったけど、直斗のおかげで失敗せずにすんだよ」
「そんな事ありません!ほとんど先輩が作っていて、僕は何も…」
「砂糖とかの分量をちゃんと量ってくれただろう?お菓子の場合、分量を少しでも間違えると違う味になるし、混ぜ方も間違えるとスポンジが膨らまなかったり、料理と違って後から、調節できないから、結構難しいんだよ」
「…そう言いますけど、昨年のホワイトデーで先輩からもらった手作りのお菓子とても美味しかったですよ」
「…たまたま、美味くできただけだよ。それより、ごめんな…突然押しかけて…」
「びっくりしましたよ…連絡もなしに来るなんて、貴方にしては珍しい…」
「本当なら、あらかじめ作って、ラッピングもして直斗に渡したかったんだけど、ここ最近忙しくて、今日がホワイトデーである事、すっかり忘れていた。本当に…ごめん」
「そんな…気にしていませんよ。それに…先輩とお菓子を作って、僕は楽しかったですよ。また…一緒に作りましょうね」
「うん。ありがとう…直斗」

前日まで、先輩から何の連絡もなくて、今年は、一緒に過ごせないのかなぁと思って気持ちが沈んでいたから、今日、先輩に会えてとても嬉しい。


「実は…もう一つあるんだ」
「えっ?」
「ホワイトデーは、3倍返しをしないといけないんだろう?…お菓子の他にもう一つ何をプレゼントしようか考えたんだけど…」
「そ、そんな、先輩が作ってくれたお菓子だけで十分ですよ!」
「…直斗が喜んでくれるかわからないけど、はい…」

彼は、自分のバッグから、赤いリボンとジャックフロスト人形のキーホルダーが付いた鍵を取り出し、それを僕に差し出す。
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