P4(short)


□君に花を
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彼が、突然ベルベットルームに来る事は珍しくない。
ただ…いつもと違うのは、彼の手には白い花束。


「あら、ご機嫌よう。申し訳ございませんが…あいにく、主は席を外しております」
「いや、今日は、イゴールさんじゃなくて…」
「マリーですか?あの娘も、外に出ております…もう少ししたら、戻ってくると思いますが…」
「いえ、今日は貴女に用があってきたんです」
「あら、何かしら?」
「これを貴女に…」

穏やかな笑みを浮かべながら、彼は持っていた白い花束を私に差し出してきた。

「これは…″マーガレット″?」
「はい…従妹と一緒に庭で育てた花です。その花を見てたら、貴女の顔が頭に浮かんだので…いつもお世話になっているお礼の気持ちも込めて、これプレゼントです」
「………………」
「…えっと、花は嫌いですか?」
「…貴方って」
「はい?」
「そういうやり口で、今まで多くの女性を泣かしてきたのかしら?」
「??」

私の言葉を聞いて、彼は首をかしげる。

「…無自覚でやっているのなら、尚、性質が悪いわ…」
「えっと…」
「ごめんなさい…何でもないわ。今のは忘れて…花は好きよ、ありがとう」

花束を受け取ると、彼は安堵の表情を浮かべる。
彼がやったのだろうか。
きれいにラッピングされた花束。
彼みたいな良い男から花をもらって悪い気はしない。
しかし、恋人でもなければ友人といえるかどうか微妙な関係の女性に『貴女の顔が頭に浮かんだので』という口説き文句もつけて、いきなり花束をプレゼントするなんて…相手が初心な女の子なら勘違いするわよ。

「よかった…受け取ってもらえて。あ、そうだ、知っていますか?″マーガレット″は、ギリシャ語で″真珠″を意味するんです。美しい貴女にピッタリのお名前ですね…」
「…貴方の恋人になる人は、大変ね」
「えっ、それはどういう意味ですか?」
「はぁ」
「??」

私も…気をつけないといけないわね。
不覚にも彼の言葉に胸が高鳴ってしまった。

″マーガレット″の花言葉は…
『愛の誠実』『真の友情』

貴方にとって、私は一体どっちにあてはまるのかしらね。


END
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