garbage box

□花ひらく
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物心ついた頃から、僕にとって彼は父親だった。

僕の実父は、僕が産まれる前に事故で亡くなり、母は、僕を産んだ後に亡くなった。

そんな僕を育ててくれたのが、僕の両親の探偵事務所で働いていた瀬多総司さんだった。

彼は、とても優秀な人でお祖父ちゃんや薬師寺さんの助手だけではなく、忙しい二人の代わりに僕の面倒をずっと見てくれた。

僕は、ずっと…総司さんの事を実の父親のように慕っていた。

人形遊びやおままごとよりも木登りやロボットといった男の子の遊びが好きだった僕は、学校では浮いた存在だった。
学校へ行かなくなった僕を総司さんは、何も言わず、仕事をしながらも、ずっと僕の遊び相手をしたり、探偵として必要な知識を教えてくれた。

僕は、同学年の子達と一緒にいるよりも総司さんと一緒にいる方が楽しかった。

早く大人になりたい。
総司さんのようになりたい。
総司さんと一緒に探偵をやりたい。

そんな気持ちが芽生えてから僕は、立派な探偵になる為に努力した。

その甲斐があってか、僕は高校生探偵として周囲に注目された。

男装をするようになったのは、周りに舐められないようにする為と僕自身男になりたいという願望があったからだ。

しかし、その願望は長く続かなかった。


両親が亡くなってから16年間ずっと、白鐘家に尽くし、僕の養育をしてくれた総司さんにお祖父ちゃんが、お見合いの話を持ってきたのだ。

僕は反対した。嫌だった。
ずっと、一緒にいてくれた彼が結婚をしたら、僕から離れていく。
不安と寂しさから、泣きだした僕の頭を撫でながら彼は、優しい声で
「直斗が嫌なら…一生結婚しなくてもいいよ。ずっと…一緒にいるよ」
と言ってくれて、その後、僕が泣きやむまでずっと抱きしめてくれた。


彼を父親としてではなく、一人の男性として見るようになったのは、あの日からだったのかもしれない。
彼への恋心を自覚したその日に僕は、男装をやめた。

END?
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