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□高校教師
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「白鐘先生」
「あっ…瀬多君。どうしました?」
「ここの問題がわからないんですけど、教えてくれませんか?」
「えっと…ここはですね」

ご両親の仕事の都合で1年という期限付きで八高に転入してきた瀬多総司君。
都会からきた転入生ってだけでも目立つのに、長身で端正な顔立ちをしている彼は成績優秀でスポーツ万能。誰に対しても優しくしっかり者の彼はあっという間に学校の人気者になった。
多くの女生徒が彼に恋をしている。
実は…私もその中の一人だ。

「ありがとうございます」
「また何かわからないところがあったら、いつでも訊いて下さい」
「はい…失礼します」

彼は私に一礼をすると職員室を出た。
彼が職員室を出て、しばらくしてから私も職員室を出た。
先ほどの彼とのやりとりはカモフラージュだ。
彼が持ってきた数学のテキストには、すでに正確な公式と解答で埋め尽くされており、その端に小さな字で″いつものところで待っている″というメッセージが記載されていた。

私と彼は出会って1カ月後に特別な関係になった。
告白してきたのは彼の方だ。正確には彼からラブレターをもらった。
「先生…これうちの両親が先生に渡して欲しいって」

転入初日以来、久々に職員室に現れた瀬多君はそう言うと白い封筒を私に差し出してきた。

「…1人でいる時に読んで下さい」

何故、彼がそんなことを言ったのか疑問に思ったけど、彼の言うとおりに私は学校から帰った後、自分の部屋でその封筒をあけた。

『白鐘直斗 様
まず、嘘をついてすみません。ああするしか貴女に自分の想いを伝える事ができないと思い、両親を利用して貴女にラブレターを渡しました。
俺は、貴女が好きです。
貴女と初めて会った時から、ずっと貴女の事が気になって、気が付けば貴女の姿を目で追っていました。
迷惑なのはわかっています。でも、俺は自分の気持ちを抑えきれず、貴女に俺の気持ちを知って欲しくて筆をとりました。
俺の想いに答える事ができないなら、今すぐにこの手紙を破り捨てて、忘れてください。
いつも通りに先生として生徒の俺と接して下さい。俺も生徒として必要以上に貴女に近づきません。
もし、貴女も俺と同じ気持ちなら明日の放課後、実習棟の最上階にある使用されていない奥の教室で待っています。
                                   瀬多総司 』

まさかの彼からのラブレターに驚きつつも、私の胸は高鳴った。

私と彼は先生と生徒だ。それだけでも許される関係ではないのに…7つも歳が離れている。

でも、私は自分の気持ちに嘘はつけなかった。
この歳になって恥ずかしいが、私にとってこれは初めての恋だった。
色々と障害はあるが、この恋を手放したら、私はもっと後悔しそうな気がした。
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