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□恋人の条件
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「ねぇ、直斗君!心理テストやらない?」

フードコートで先輩達を待っていたら、久慈川さんが鞄から心理テストの本を取り出してきた。

「…いいですけど」
「じゃあ、紙とペンを用意して!」

言われるがまま、僕が自分の鞄からメモ帳とペンを取り出す。

「では、貴女が好きになる異性の条件を3つ書いて下さい!」

「え!?えっと…」

参ったな…こうきたか。何って書こうかと考えていたら…先輩の顔が頭に浮かんだ。
…先輩の好きなところを書こうかな。

まず一つ目は、尊敬できる人かな。
もし、結婚するなら白鐘家の当主にふさわしい誰からにも尊敬できる人じゃないといけない。
これは先輩と出会う前からの絶対条件だった。
博識で武道や料理もできて、リーダーシップもあって、誰からにも慕われている先輩はまさに
僕の理想通りの人だ。

次に二つ目は、優しい人。
常に周りをよく見ていて、困った人がいたらすぐに声をかけたり、損得考えずに自然に彼は人助けをする。
お人よしすぎる…と思う事もあるけど、でも僕はそんな彼が好きだ。

最後に三つ目は…いつも笑っている人。
先輩は、いつも優しく微笑んでいるけど…僕が好きと言ったり、僕が作ったラムネとチョコを食べている時の顔は、子供みたいに本当に幸せそうに笑ってくれる。この笑顔が見られるなら、僕はなんでもしてあげたくなる。

「3つ書いた?」
「はい…」
「では、貴女の目の前にその3つの条件がそろった異性が二人います。もう一つ条件を加えるなら?」
「よ、四つ目を書かないといけないんですか?えっと…」

先輩が二人か…。うーん、やっぱり…。

四つ目は…どんな僕でもずっと好きでいてくれる人。

「書いた?見せて、見せて!」
「どうぞ…」

僕が書いたメモを見て、久慈川さんは「ふーん、なるほどね」と言った後

「…直斗君の好みって…先輩なんだね」
「え、だ、だって…先輩はこ、恋人なんですから、好きなタイプと言われましても自然とそうなると言いますか…」
「…実は、だいぶ前に先輩にもこの心理テストをやらせたんだよね」
「えっ!だいぶ前って…いつですか?」
「えっと…夏休みにかな」
「先輩は…何て書いたんですか?」
「確か…一つ目は料理上手な人」
「…やっぱり」

これは男性の皆さん、大体が異性に求める絶対条件だと思う。
特に先輩は、食べるのが好きな人だから…そういう人が好きなんだろうなという事はわかっていた。
少しずつ料理はするようになったけど、先輩に比べたら僕なんてまだまだ料理上手とはいえない。


「二つ目は一緒にいて癒される人で、三つ目は趣味が合う人だったかな」
「……」

癒される人…先輩は僕と一緒にいて癒されているのかな。僕は恋愛に不慣れで、素直じゃなくて可愛げがなくて…お世辞にも癒し系とはいえない。
趣味が合う人…僕はどちらかというと機械いじりとか特撮とか男っぽい趣味を持っているから、男である先輩と趣味が合って当然といえば当然なんだけど…。

…この3つの条件に僕はあまり当てはまっていないかな。理想と現実は違うというけど…先輩は僕のどこを好きになったんだろう。

「四つ目なんだけど…先輩、そこだけ教えてくれなかったんだよね」
「…そうなんですか?」
「…気になる?」
「は、はい…」
「じゃあ、先輩に訊いてきて!」





「…という事がありまして」
「あー、その心理テスト…陽介達とやったな」
「その…四つ目に何を書いたのか教えてくれませんか?」
「いいけど…」

あ、僕にはあっさりと教えてくれるんだ。

「はい…じゃあ、俺はこれで」
「えっ?」

小さく折り畳まれたノートの切れ端を僕に渡すとなぜか彼は走り去って行った。

…見られてまずい事でも書いてあるのかな。でも、それなら僕にメモを渡す訳ないし…。
疑問に思いながらも、渡されたノートの切れ端を見ると…驚きと同時に顔に熱がこもった。

1〜3つ目は、久慈川さんが言っていた通りの事が書かれていて、四つ目の条件は三つ目から少し離れた行に小さくこう書かれていた。






"白鐘 直斗"



「…ほんと、恥ずかしい人ですね」






「四つ目の条件はね…貴方が異性に求める本当の条件なんだって!」



久慈川さんの言葉を思い出し、僕は嬉しくて、しばらく顔の緩みを抑えきれなかった。
先輩がこの心理テストをやったのは、今年の夏休み。
…僕が仲間になる前から僕の事…好きだったって思っていいんだよね。


翌日、久慈川さんから「何て書いてあったの?」と訊かれたけど…それに対し僕は「秘密です」と答えた。



END
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