P4(short)


□風邪
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「総司さん……」
「……なおと!?」

驚きで思わず上半身を起こし、どうしてと言葉を続けようとしたら、ゴホッゴホッと瀬多は苦しそうに咳き込んだ。

「大丈夫ですか!?」
「あぁ……」
「仕事が予定よりも早く終わったので、貴方に会いに行こうと思って、家へ上がったら、貴方が苦しそうに寝ていたから……」
「そうか……」
「なんで連絡してこなかったんですか!!」
「なおと……」
「僕は、貴方の何なんですか!!」
「ごめん……」
「……総司さんの事だから、迷惑をかけたくないと思って連絡しなかったのでしょう?……迷惑なんて思わないですから。むしろ、総司さんは、もっと人を頼った方がいいですよ」

泣きそうな顔をした彼女を抱きしめた。
良かれと思ってした瀬多の気遣いが、却って彼女を傷つけてしまった事を知り反省した。

大事な人が苦しんでいたら、助けたい。でも、その大事な人に拒絶されたり、頼りにされなかったら、傷つく。(本人はそういうつもりじゃなくても)

あの時、両親が何故あんな表情をしていたのか瀬多には理解できなかった。
今日、直斗が来てくれなかったら、ずっとわからないままだったのかもしれない。


「あっ、お腹空いていませんか?僕、おかゆ作りますから……」
「……大丈夫なのか?」
「だ、大丈夫ですよ!おかゆ位作れますよ!僕、あれからちゃんと自炊しているんですよ。その……卒業したら、貴方と一緒に暮らす為に練習していて……」

顔を真っ赤にし、もじもじしている恋人が影でそういう努力をしていた事を知り、瀬多の顔が綻んだ。

「うん、わかった。期待している」
「台所お借りしますね。それまで安静にしててくださいね」
そう言うと直斗は台所へ向かった。
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