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□貴方だけのメイド
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女の子らしい装いをするようになったけど、スカートだけは未だに慣れず、制服だって学ランのまま通学している僕にメイド服は、ハードルが高すぎる!!


文化祭前日まで、メイド服の着用を断固拒否する僕を見て久慈川さんは、残念そうな顔をした。

「そっか、こんだけ説得しても、嫌なら仕方ないよね」
「すみません」
「せっかく、完二が私達の為に夜鍋して、メイド服作ってくれたのに残念。私、直斗君とおそろいのメイド服を着て、一緒に参加したかったのになぁ」

久慈川さんの気持ちは嬉しい。巽君に対して申し訳ない気持ちもある。
でも、無理なもんは無理!

「……先輩、がっかりするだろうなぁ」
「えっ!」
彼女の口から先輩の名前が出て、びくっと反応してしまった。

実は、先輩から「直斗のクラスは、何やるの?」と訊かれていたのだけど、僕はずっとはぐらかしていた。
隠したって、当日ばれる事なのに……。

「今年の文化祭は、メイド喫茶をやるよって言ったら″楽しみにしている″って言ってたのになぁ」
「く、久慈川さん!先輩に話したんですか!?」
「隠したってしょうがないでしょ。当日になれば、ばれるんだから」
「そ、そうですけど……」
「心配しなくても大丈夫だよ!先輩こうも言っていたから、″でも、直斗は嫌がるんじゃないか。直斗のメイド服姿は見たいけど、それを直斗に強制するのは、かわいそうだ″だって!直斗君、愛されているね〜」

そう言って久慈川さんは、肘で僕の肩をつつく。
「先輩……」
僕は、先輩の優しさに感動した。
いつまでたっても女の子らしくなれない僕を先輩は、いつも気遣ってくれる。

メイド喫茶の事隠してごめんなさい。
大好きです、先輩。

「じゃぁ、直斗君は、接客なしで完二達男子と一緒に裏方の仕事ね!委員長には、私から言っとくから!
「は、はい」

先輩の事を考えていた僕は、久慈川さんの声にはっとした。
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