P4(short)
□ファーストキスの味
2ページ/3ページ
でも、この機会を逃したくない。
「直斗……」
先輩の手が僕の頬に触れてきた。
彼の綺麗な顔が近づいてくると、僕はぎゅっと目をつぶった。
彼の熱くて柔らかな唇が僕の唇に触れた時、ほんの少しだけ、彼が口にしていたリボンシトロンの……レモンのような味がした。
体育館でした彼との初めてのキスを思い出してしまい、顔が熱くなった。
「……先輩のばか」
リボンシトロンを見る度に僕は、彼との初めてのキスを思い出してしまう。
あれから、何度もキスをしたのに……やっぱり、ファーストキスって特別で一番記憶に残るものなんだと改めて気付かされる。
恥ずかしいけど、嫌じゃない。
あの時のファーストキスの味をもう一度味わいたくて、リボンシトロンを選んだ。
プルトップを開け、リボンシトロンを口にすると、ほのかな甘みとさわやかな柑橘系の香りが口の中に広がる。
ちょっとだけ、やみつきになりそうだ。
彼も、リボンシトロンを見る度に僕とのファーストキスを思い出してくれるといいな。
今は、ここにいない都会にいる彼の声が聞きたくなって僕は、スマートフォンを取り出した。
END