短編
□共に
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しん、と静まり返る部屋に俺は
「失礼します、梵天丸様。」
と言い入る。
『また、お前か。』
小さく呟いた童子。
右目を包帯でぐるぐる巻きにし、決して元気な子とは言えない梵天丸様は部屋の隅にいた。
『用は何だ。』
「特にありません。梵天丸様、一人ではつまらないでしょう。外に…『小十郎は俺を馬鹿にしてるのか?』
童子の声とは思えない程低く冷徹な声。
しかし、それは俺にとって日常茶飯事だ。
俺が輝宗様に、梵天丸様の守につくよう言われたのは一月前。
日が経つに連れて俺に心を開いてくれている気がする梵天丸様。やっと下の名でも呼んでもらっている。
だが、
冷徹な声は治らず。
「馬鹿になどしていません。外には誰にもいませんし、日の光りを浴びた方が体にも良いです。」
『ふん…。』
梵天丸様は俺の方向に歩いて来て外の光りが眩しかったのか、目を細くする。
『冬なのに暑いぞ。』
「今日は快晴ですからね。」
意外にも、ほのぼのとした時間がながれていた。
『民が見えるぞ。』
「えぇ。皆畑仕事を一生懸命頑張っていますね。」
『俺は将来、立派な伊達家当主になれるか?』
「え?」
いきなりの質問に素っ頓狂な声を出してしまう。
「…そるは、梵天丸様の頑張りようによります。」
『そうか…。』
それだけ言い梵天丸様はまた村々を見る。