裏部屋
□忘
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「政宗様、今日はゆっくりしていて下さい。傷口が開きます。」
『Thank you.じゃあお言葉に甘えるぜ。』
「では、私はこれで。」
小十郎は襖を閉め、静かに廊下を歩いて行った。
『情けねぇ。』
独り言を呟く。
右目はもう痛くない。
『豊臣に渡せる訳がねぇ。』
ならもっと強くなんなきゃいけない。
「よく一命を取り留めましたね。」
『この声は…!
おい、出てきやがれ。』
明らかに屋根裏に隠れている事はわかった。
それでもあいつは出てこようとはしなかった。
「随分前からここにいたんですがね。成る程、余程あの家臣は主君を大切にしていると思える。」
『だろ?わかったらさっさと帰れ。』
何でこんな奴と話さなきゃいけねぇんだ。
俺は右手を強く握り締める。
「貴方がそこまで言うなら…。しかし忘れないでください。天下は私達豊臣軍だと。」
『そんな言葉すぐに忘れてやるぜ。天下は独眼竜のもんだ。』
言い終わった後にはもう竹中の気配は無かった。
『負けねぇ。』
そう一言だけ呟いた。
end.
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