信浜
□色づく少女とその因果
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逞しく色白な腕に抱かれながら、すぐそばですぅすぅと寝息が聞こえる。
顔をそっとあげれば白い髪の美貌の青年が、子供のような無邪気な顔をして眠っている。
まだ、日は昇っていないのだろう。
部屋の中も、まだ薄暗い。
外は部屋の中と比べてどのくらい明るいだろうか。
何故か急に確かめたくなったが、男にぎゅう、と抱かれている為、確かめるどころか身動きさえとれそうにない。
「浜路…」
自分の名をぽつりと呟く信乃にククッと少々苦笑しながらも、その頭を撫でる。
ああ、なんて幸せなのだろう。
ふと思う。
あともう少し時間がたてば、隣ですやすやと眠る信乃を起こし、朝飯を作り、そして「いってらっしゃい」と手を振った後、家事をしながら彼の帰りを待つことになる。
やっと捕まえた愛する人との生活に、想像すらしたことのなかった幸福に、窒息してしまうのではと思ったほどだ。
だが、一部のことを除いてはだけれど。
何も、不満はない。
生活も安定している。
彼の仕事が休みの日には、一日中自分にくっつきっぱなしでいる(たまに甘い言葉まで言ってくる)信乃が、
愛しくて、
可愛らしくて、
子供のようで。
これから先もずっと一緒に、繋がっていられるなんて夢のようで。
それなのに。
「……うっ…!」
ばっと口元を手で押さえ、しばらく動かずじっとする。
訳の分からぬ症状がようやく収まりほっとする。
それと同時にとめどない不安が浜路を襲った。
最近吐き気がとてつもなく酷いのだ。
ある晴れた昼下がり、洗濯物をたたんでいるとその症状は突然やってきたのだった。
その時は、若干不安を残しながらも、一年に一度風邪をひくかひかないかの自分なのだからきっと大丈夫だろうと、自らに言い聞かせた。
いや、そう思いたかったのかもしれない。
何らかの病では、と思うこともあったが怖くてそれ以上は考えられなかった。
信乃に話したところで、きっと余計な心配までさせてしまうだろうからと、つまりはまだ話していないのだ。