佐鳥姫の憂鬱

□佐鳥姫の憂鬱 第2章
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_____あなたはいつも私を見ていない。


神計大学前駅まではひと駅だが、今日ほどその距離を長く感じたことはない。

そういった表情で、深春は目の前に立つ夜間瀬大志先生を上目遣いで見上げている。

私たちは横長に伸びる席に座っているが、なぜか他にも空いている場所はあるのに、先生は私たちの前に立っているのだ。

両腕でしっかりとかばんを抱え、まばたきもせずにジッと彼を見上げる様は異様でもある。

「深春、気になるなら言えばいいのよ」

「言えるわけないでしょ。先生の頭に水をぶっかけてすみません、なんて…」

深春は私の腕を小突き、小声で不満げに言う。

「危ないことはもうしませんって謝ったらいいわ」

「そんな子どもみたいな謝罪できないよ」

「じゃあ気にすることないわ。先生は怒ってないし、気にしてもないわよ」

「だからー、気にしてないと思ってるのは華南だけ」

そうやってこそこそと話してるうちに電車は神計大学前駅へ到着する。

夜間瀬先生は電車が停車するとすぐに、開くドアをすり抜けていく。

「ちょっと華南、先生はやいっ!追いかけるよっ」
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