僕等の嘘つきHONEY

□意地悪
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「ねぇ乱太郎、大事な話があるの」
「へ?何?」


保険委員の彼は昼休みの当番の仕事をするべく、薬箱の整理をしていた。
私も特にやることがなく、暇だったので彼についてくことにした。

昼休み、保健室、二人きりーー、
こんなに素敵な条件が揃っているのに目の前の真面目な彼は仕事に夢中。
私は一人だけ除けものにされた気分になり、無性に寂しくなった。


そんな時だった。
私の悪戯心がウズウズと動きだしたのは。
ちょっとしたお仕置きよ、私を一人にさせておくなんて。
少し痛い目をみればいいんだわ。


もう一度、乱太郎、と名前を呼ぶと彼は仕事をしたまま耳だけを私に傾けた。
私は勿体ぶらずに言う。


「別れたいの」
「はいはい、別れたいんだね・・・・・・・・っえ!!!!???わ、わわ、別れ、別れたい!!??嘘!!??え????痛っ!!!」


仕事を中断して、勢いよく頭を挙げ、そのまま壁にぶつける。
流石は不運委員会。


「え、わ、別れたいって言った?」


心底驚愕して、私の両肩を掴んだまま乱太郎は私を疑視した。
余程、驚いたのだろうか、目がグルグル回っている。


「え、わ、私、なんかした?別れる?え?え?」


乱太郎は私の想像以上に混乱していて、見ていて面白いくらいだ。
こんな状況であるのに、今、乱太郎の意識が私に向いている、その事実に思わず頬が緩む。
対して乱太郎は絶望的な表情をして、下を向きながら、弱々しく呟いた。


「私のこと嫌いになったの?」
「・・・・・うん」
「っ、!!!」


あからさまに傷ついた顔をするので、流石に私の良心も痛み始めてきた。
ちょっと言い過ぎたかもしれない。


「最近、委員会の仕事が忙しくて、二人の時間を大切にできなかったけど・・・・」
「・・・・・・」
「でも、私だって寂しかったんだ」
「・・・・・・」
「・・・・君が私のこと嫌いでも、私は君のこと好きだよ」




「愛してる」



それは本当に聞き取れないくらい弱々しい一言で、けれども私には懇願するようなその言葉がしっかりと聞こえた。

あぁ、駄目だ。これ以上、嘘をつけない。
だって私は乱太郎のことが好きなんだもの。



「私も愛してるよ」
「別れたくない!!!!!って・・・・・・・え」
「だから、私も愛してるって」



半泣き状態から目を丸くしてキョトン、とする乱太郎。
未だに現状が飲み込めないようだ。


「え、だって、え?わ、別れたいって・・・」
「うん。ごめんね?嘘なの」
「う、嘘!!!!!!!?????」
「嘘。少し意地悪しちゃった」
「え、じゃあ、別れたいっていうのは」
「嘘よ、愛してるって言ったじゃない」
「・・・・・・よ、よかったぁぁ」


本気で安心したのか腰が抜けたようにヘナヘナと床に座り込む乱太郎。
そんな可愛い彼の横に駆け寄り、私も座り込む。


「だって、寂しかったんだもん。乱太郎、委員会ばっかりだったから」


耳元でそう言うと乱太郎は片手で私を引き寄せた。


「じゃあ、今週の週末、デートでもしようか」
「うん!!」





いつもだって、私に振り回されてくれる、そんな彼が大好きです!!!!!


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