擬似恋愛

□5:頼みごと
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どうしよう・・・
本当にどうしよう・・・・

私はいま悩んでいた。
非常に。



時は遡り、30分前。
私は中間試験の課題の発表を教室で待っていた。
実は今回の試験を失敗すると単位的に進級できないのである。
だから私はこの試験に命を賭けるような意気込みで望んでいたのだった。


『はいはい、皆さん席について』


担任の山本シナ先生が教室に入ってきて、課題が発表される。
教室中の生徒が課題内容を待ち望んで、重い空気が流れた。


どうか・・・・!
どうか色の実習ではありませんように!!


私が最も苦手とする科目は『色』
ただの行儀見習いとして学園に入学した私にとっては、なんというか、色の授業は刺激が強すぎるのだ。


この際、実技でもいいから、色だけは!色だけはご勘弁を!!


『今回の試験の課題は色の実習です!』


\(^ω^)/


終わった・・・・
私のスクールライフ、終わった・・・

私の切実な願いも虚しく、課題は色に決定してしまった。


絶望的な私に対して他のくのたまの子達は・・・

『はぁ、簡単でよっかた〜』
『実技なんかより全然いいよね』
『パッパと済ませちゃおっと』

かなり、喜んでおられた。


『内容は簡単です。学園の忍たまの生徒と恋仲のふりをして町へ出かける。たったこれだけです』

上級生になったらもっと難しい内容ですからね。
と言いながら山本シナ先生は去っていった。


簡単て、簡単て!!!!
めっちゃ難しいがな!!


『雛は楽勝よね〜、なんたって浦風くんがいるもの』
『彼氏持ちはこういうとき便利だよねー』


友達が嫌味を言ってるけど、私の内心は穏やかではなかった。

彼氏っていっても本当の彼氏じゃないですから!!
頼めるわけないですよ!
もし頼んだりしたら

こんなときも恋仲のふりしなくちゃならないの?
ってなりますよ!


だから浦風くんには絶対頼めない!

・・・どうしよう







と、いうとがあり、現在悩んでいるのである。
その後、作兵衛に頼みに行ったが、方向音痴二人組の捜索で留守。
数馬のところにも行ったが、委員会で手が離せなっかた。
孫兵は人気がすごくて近づけなかった。


困った。


今日中に忍たまの誰かと約束しないといけないのに・・・
段々、日も沈んできていた。


どうしよう、このままじゃ進級できない・・・
縁談を受ける前に学園を辞めなくてはいけなくなってしまう。


思い浮かぶのは、浦風くんの顔。
でも、浦風くんに迷惑はかけたくない。
嫌われたくない。


本当にどうしよう・・・



「あれ、山田さん?どうしたの?」


こ、この声は・・・・


「浦風くん・・・」


そこには頼ってはいけないとわかりながらも
心の奥では焦がれてやまなかった浦風くんがいた。


「な、なんでここに・・・」
「縁側に山田さんがポツンと座っていたのが見えたから。
浮かない顔をしているね。何か悩み事?」
「そ、それは」


言ってしまっていいのだろうか?
浦風くん、迷惑じゃないかな?

頭の中で考えが、ぐるぐると回って隣に浦風くんがいるのに、何も話せないままでいた。
そんな私の様子を浦風くんは違うように読みっとたようだった。


「・・・ごめん。俺になんか話せないよね。ごめん、出しゃばったりして」


浦風くんは悲しそうに目を伏せて立ち上がる。


違う。違うの!!
そんな顔させたいんじゃない!!
誤解、誤解なんだよ、浦風くん。


「待って!!!!」


去ろうとする浦風くんの袖を手に取り、引き止める。
浦風くんは驚いて振り返った。


「山田さん・・?」
「違うの!浦風くんに話せないとかじゃなくて!私に勇気がなかっただけで!」
「勇気?」
「う、浦風くんにお願いしたいことがあったんだけど!!迷惑をかけたくなくて!!だから・・・だから、浦風くんが謝る必要なんてないの!!」


顔を下に向けていると、私の手の上に浦風くんの手が重なった。
驚いて前を向くと浦風くんと目が合う。


「俺にお願いしたいことって何?」
「そ、それは」
「教えてよ、協力するから」
「・・・・い、色の実習で、忍たまの誰かと町へ出かけるって課題が出てて、その」


迷惑じゃないかなと思い、浦風くんの顔を覗いた。
でも浦風くんは私が想像したような表情ではなかった。


「え、それだけ?」
「う、うん」
「なんだぁ、全然、迷惑じゃないよ。いいよ、一緒にいこう」
「え、いいの?」
「うん。逆に遠慮なんてしないでよ」

仮でも恋人なんだからさ、


その言葉に体中の熱が顔に集まった。

「これからはそういうこと俺に相談してよ、力になるからさ」

浦風くん、自覚無しでこういうこと言っちゃう人だからな・・・

心臓がいくつあっても足りないよ。





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