なんということでしょう。

□1:神様がゆるしても
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「雛ー、早くしなさい。はっちゃん、待ってるわよ!!」
「わかってるって!!!」


学生の朝は早い。
毎朝、6:00に起床して、制服に着替え、朝ごはんを食べて、学校へ向かう。
毎日、同じことの繰り返し。


私は思う。
自慢ではないが、私は一度も学校を休んだことがない。
真面目に今まで、生活してきたのだ。
今日くらい、休んでもいいだろう。


うん。神様もきっと許してくれるに違いない。


幼なじみの"はっちゃん"こと竹谷八左ヱ門には悪いけど・・・


勝手に一人で納得して、制服からジャージに着替えることにしたが・・・


「雛ー!!!学校いくぞー!」

「ギャァァアア!?着替え中なんですけど!?」


扉を破壊する勢い(いや、実際に破壊してるけど)で入ってきた兄によって、それは不可能となった。


「お兄ちゃん!?言ったよね!?私!!部屋に入るときはノックしてって!!!」
「雛ー、お前、本当に胸ちっちゃいなー。背中かと思った」
「私の話聞いてる!?」
「そんなことより学校行くぞ!!!」
「は、」
「いけいけ、どんどーん!!!」
「ギャァァアア」


もう一度、言おう。
私は学校を休んだことがない。
ーー否、休めないのだ。


この兄のせいで!!!


神様が許してくれたとしても、この兄は許してくれたりなんかしない。


私を担いで、走って玄関に向かう兄。


私の兄、七松小平太は一言で表すとーー


自分中心な人物。である。


小学生の時、私が風邪で寝込んでいた時ーー


『雛っ!!いつまで寝てるんだっ!?遅刻するぞ!?』


熱が39°まである私を無理矢理、学校に連れていったり。


中学生の時、男子に振られて部屋に塞ぎこんでいた時は、


『お前を振った奴は何処のどいつだ!?』


勝手に怒って、嫌がる私を学校へ連れていった挙げ句に、
私を振った男子生徒を目の前でフルボッコにしたのである。


その日からだろうかーー
学校の男子生徒が私を避けるようになったのは。
最初は仲良くしていても、私が七松小平太の妹だと知ると、皆離れていった。
お陰さまで、私の周りにいる男子といえば大抵、兄の友達かはっちゃんとその友達くらいになってしまった。


誠に遺憾である。


「お、降ろしてよ!!まだ部屋に鞄、置きっぱなんだってば!!!」
「教科書くらい、誰かに借りろ!!!」
「そんな、無茶な!?」
「竹谷おはよーっ!!!」
「あ、七松先輩。おはようございます」
「はっちゃん、助けて!!!」


あっという間に玄関に到着してしまい
玄関で既に待機していたはっちゃんに助けを求める。



「雛、お前サボろうとしてただろ」
「ギクッ」
「やめとけ、やめとけ。七松先輩がいる限り、お前はサボれねぇよ」
「当たり前だろう!!私がいる限り雛を不良なんかにはしない!!!」
「そんな、オーバーな」


サボるだけで、不良って!!!
どこかのギンギンと似たようなこと言わないでよ。



「今どき、なんで兄妹で登校しなくちゃいけないのー?」
「雛がまだ子供だからだ」
「年一つしか変わらないくせに!!もう高校生だし!!」
「いいや、子供だ。そのまったいらな体が、なによりの証拠だ」
「喧嘩、うってんの?」
「雛、落ち着けって。七松先輩も雛を煽るようなこと言わないで下さいよ」


今にも兄妹喧嘩を始めそうな私達の仲介をするはっちゃん。


私の味方は、はっちゃんだけだよ!!!


「なんだ、竹谷。雛の肩をもつのか」
「め、滅相もないッス!!!」
「ちょと、はっちゃんをいじめないでよー!!!」
「雛、お前、私より竹谷を庇うのか!!!」
「意味わかんないだけど」


未だに玄関にいる私達を見た母が血相を変えて走ってきた。


「ちょっと、あんた達!!!いつまで玄関にいるの!?遅刻するわよ!!!」

はやく行きなさい!!!と叫ぶ母。


「おい、竹谷」
「は、はい!!!」
「今、何時だ」
「・・・8時ッス」


授業開始は8時25分。
家から学校までかかる時間は40分。



三人でお互いに顔を見合わせる。







「「「ち、遅刻だぁああああ!!!」」」










(と、とにかく走れ!!!)
(は、はい!!!)
(お兄ちゃん!!はっちゃん!!自転車!!!)
(おぉ、サンキュー)

(・・・竹谷)
(はい?)
(雛に手ぇ出したら殺すからな)
(・・・・はい)



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