なんということでしょう。

□4:純粋な心を求めて
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「マラソン大会をしよう!!!」
「いきなり!?」


本日は委員会活動日である。
私は勿論、体育委員会。

本当は、はっちゃんと同じく生物委員会に入りたかったんだけど、目の前の暴君に無理矢理、体育委員会に所属させられたのだ。

しかも暴君、七松小平太が委員長ということで一向に女子の委員が集まらない。
未だに女子委員は私だけという悲しい現実に直面している。


「マラソンって、この人数で!?しかも今から!?無理でしょ!?」
「無理ではない!!!今から10qマラソンをする!!!」


10q・・・?
今、この人10qって言った?

それって高校男子のマラソンと同じ距離じゃないですか?

女子のマラソン距離の二倍ですよ?


この体育委員長様は正気であられるのか?


「ちょ、ちょっと待ってください!!!七松先輩!!!10qなんて中等部生が完走できるわけないじゃないですか!!!」


兄の自己中心の発言に対して、体育委員会に所属している高校一年生、平滝夜叉丸が抗議した。

同感である。

本校、大川学園は中高一貫校。
そのため委員会活動や部活動は中高合同で行われている。


「そうだよ!!!いくら三之助が走れても、金吾と四郎兵衛が死んじゃう!!!」


だってほら!!!
まだ13歳なんだよ!!!
こんな可愛いんだよ!?無理にきまってる!!!
もはや人間じゃない兄のペースについていけるわけがない!!!私も無理だし!!

「雛先輩、僕頑張れます」とか言ってるけど止めとけ!!!可愛いから!!!
あ、違った。死んじゃうから!!!


滝夜叉丸に便乗して抗議するが、世界=俺!!!という思考回路の兄には通用しない。


「私がやると言ったら、やるんだ!!!反対意見は認めない!!!」
「まさに暴君!!!」


そう。誰も兄には逆らえない。
体育委員会、いやーー
学園の掟である。


「・・・滝、お兄ちゃんの制御は頼んだよ☆」


兄を止めることは不可能。
ーーーならば!!!
我が委員会で最も頼れる委員。
滝夜叉丸に全てを託すことにした。
皆は自意識過剰のナルシストとか言うけどね、この子、本当は一番の常識人なんだよ。
本当、苦労してるんだよ。


「何が「頼んだよ☆」ですか!!!嫌ですよ!!!雛先輩、なんとかして下さいよ!!!貴女、妹でしょ!!!」


うん。無理。

私が兄をどうのこうのするとか、そんな必殺奥義、持ち合わせていないから。


それにね、あれは私の兄じゃない。
あんな暴君、私知らないもん!!!


「全部、聞こえてますからね!?現実逃避しないで下さい!!!」

「グダグダ五月蝿いな!!後輩なんだから黙って先輩の言うこと聞けや」

「そういうところ、七松先輩にそっくりですね!!!」

「じゃ、後は頼んだ☆」

「ちょ、待っ、雛先輩ぃいいっ!!!!!」


私は一度も振り替えるとこなく、中等部生の下へと向かった。
滝夜叉丸には私のために尊い犠牲になってもらう。

心配しないで!!滝!!
今日は私がちゃんと三之助の面倒みるからね!!迷子にならないように!!
中等部生に合わせてゆっくり走るから!!
滝は安心して兄と仲良く走ってね!!!





「ちょ、雛先輩、何スカ。いきなり縄なんて出して。そういうプレイですか」
「あんたが迷子にならないようにだよ!!!」


普段、滝夜叉丸がしているように、三之助が迷子にならないよう、縄を用意する。

それは見て、何を勘違いしたのか。この馬鹿は。


「心配しなくても俺は雛先輩のものですよ。まったく独占欲が強いんだから」
「私はアンタの頭が心配だよ」
「照れないで下さいよ、ツンデレか」
「誰か医者を!!!」


こいつ、ただの方向音痴ではない。
思考も方向音痴だよ。


照れ隠しかよ、とか色々勝手に言っている三之助を無視して金吾と四郎兵衛の方へ振り返る。


「本当に大丈夫?辛くなったらちゃんと私に言うんだよ?」


二人の視線に合わせて少し屈む。
いや、屈むまでもないかも。
二人とも結構、身長高いんだな。


「はい!!!雛先輩にしっかりついていきます」
「頑張ります!!!」


輝かしい笑顔に目が眩む。

おま、お前ら・・・!!!
なんで、そんなに可愛いんだよぉおお!!!
天使?ねぇ、天使なの?天使だよね?
そんなに可愛い事言うと、私襲うよ?

「・・・雛先輩?」


暴走していた私の心を止めてくれたのは、やっぱり可愛い後輩。
あ、決してあの方向音痴ではありません。

危ない、危ない。
もう少しであの変態共の仲間入りだったわ。そんなの絶対にごめんだ。

金吾と四郎兵衛に感謝。感謝。


「そういえば雛先輩」


ズシリと背中に重みを感じたと思ったら、三之助が私に背中を預けていた。


「え、何?てか重い。どいてよ」
「俺さー」
「退けよ!!!」


「今日、誕生日なんスよー」


何事もないかのように述べる。

え?それゃあ初耳。


「え、おめでとう」


素直に祝いの言葉を送り「何か欲しいものとかある?」と尋ねてみる。


「え、なんでもいいんスか?」
「あんまり高いものとかは無理だけど・・・」


軽い気持ちで言った自分が馬鹿だった。
三之助という男を理解していたはずだったのに。



「雛先輩の初めてを俺に下さい」
「いや無理だけど!?」



そんな人の誕生日に自分の操をプレゼントするほど私は安い女じゃないんですけど!?

しかもお前まだ15歳でしょ!?
何、言っちゃてんの?


「えーなんで」じゃない!!!
普通に考えて却下だよ!!!そんな希望!!


「次屋先輩、初めてって何のですか?」
「金吾、初めてってのはキスは勿論、処じ「待て待て待て!!!何、金吾に吹き込んでんの!?止めて!!!」


純粋な金吾を汚さないで!!!
ただその一心で三之助を止める。
金吾にはまだ早い世界なんだよ!
お前も十分、早いけどね?


「雛ー!!!私にもちゅーしてくれ!!!」
「ギャア!!!どっから湧いた!?」


いきなり真横に現れた兄によって内蔵的な何かが飛び出そうだった。

しかも、四郎兵衛が潰れてる!!!
退いてあげて!死んじゃう!!

「七松先輩!!!勝手にいなくならないで下さいよ!!!」

後ろから息を切らせた滝夜叉丸が走ってきた。
顔が真っ青だ。
本当に苦労したんだろうな。ごめん。


「ダメですよ。七松先輩。雛先輩のファーストキスは俺が貰うんですから」


約束しましたから。って!
そんな約束してませんよ!?三之助さん!?

あげるわけないでしょ?
ファーストキスは女の子にとって一生の宝物なんだから!!!
いつか本当に好きな人とーー



「何言ってるんだ?三之助」


キョトンと目を丸くする兄。







「雛のファーストキスの相手は私だぞ?」








初耳なんですけど!?








(え?いつ!?いつ!?嘘!?)
(うーんと、10年前くらい?)

(なんだ。ファーストキスはもうないのか。じゃあ俺、処女でいいスよ)
(やらねぇよ!!!)


(滝夜叉丸先輩、処じ(金吾、お前だけはそのままでいてくれ)
(滝夜叉丸先輩、なんで泣いてるんですか?)



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