君と見た花の名
□だって好きだもん
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ある日の昼下がり、私は妹子を法隆ぢに呼び出した。
もちろん、この法隆ぢは2代目である。
「どうしたんですか?太子。いきなり来いって…」
「まぁまぁ上がりんしゃい」
「はいはい…って臭い!!玄関からもう臭い!!」
上司に呼ばれてなんだその態度は。
臭いって何だ。臭いって。
「で、何ですか?用事って」
居間に案内し、二人でこたつに入ってまったりしようとした時だった。
まったりする間もなく聞いてきたぞ…。
「それよりも妹子、今お茶いれるから待ってろ」
私はえ?と、少し戸惑ったような表情をした妹子を残し台所へと向かった。
* * *
私ってこんな情けなかったかな…。
いざ妹子を目の前にすると、どうすればいいか分からなくなる。
どうしてあんなに可愛いんだろう…。
日焼けしてない白い綺麗な肌。
さらさらの栗色の髪。
澄んだ黒い瞳。
…余りにも完璧すぎるだろ。
ああ、独り占めしたい。
妹子は知らないだろうが、朝廷内には妹子を狙うやつらもいっぱいいる。
毎日毎日…妹子宛の手紙を処分するのも楽じゃない。
「全く…こっちの事情も考えろ芋め…」