君と見た花の名

□やっぱり嫌い
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時は安政


春のぽかぽかとした暖かさにうとうとと居眠りしてしまいそうな今日のこの頃、


善福寺にはある叫び声が響いていた。


「はぁ!?明日から異人が来る!?何考えてんですか!!」


「いや…だから今謝ってるだろう…」


「許しませんよそんなこと!!」


全然居眠りなんて出来ないこの叫び声の持ち主は私。


「第一何でもっと早く言わなかったんですか!!」


「…お前が怒るかなと思って…」


目をあちらこちらに泳がせて、しどろもどろに言った和尚さん。


「いつ言おうが怒りますよ」


はあ…と私が再びため息をつくと、和尚さんはすまん、と言った。


この和尚さん、一応身寄りのいない私を拾ってくれた。


こうして見ると頼りない感じだけれども、私の恩人である。


「明日来るのはアメリカ国務領事館、タウンゼント・ハリスとその秘書兼通訳ヘンリー・C・J・ヒュースケンだ」


「名前言われたって知りませんよ!!」


ああもう憂鬱。


明日からどうしよう?


境内うろうろ出来ないじゃない。


どうしよう…。


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