便利屋の銀魂な話
□便利屋
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「…いらっしゃいませ」
この空間には似つかわしくない声。
この空間には似つかわしくない顔。
「おい、誰だよコイツ。代えてくれよ。酒が不味くなんだろ」
久しぶりに賭けに勝ち、臨時収入を得た銀時が来たのは'すまいる'だった。
特に指名もしないで席に座っていると、やってきたのは仏頂面の、まだ子供に見えるヤツだった。
「ごめんなさい銀さん。今日はお客さんが多くて、今はこの子しか手が空いてないの」
お妙が目の前を通り過ぎさまにそう言った。
「つってもよォ。…こんなやついた?」
銀時が不満たっぷりな顔で見ると、「こんなやつ」と言われたキャバ嬢(?)はそれ以上に不満そうな顔をこちらに向けた。
というより睨まれた。
「便利屋さんよ。今日だけここで働いてもらってるの」
「べ、便利屋ァ!?」
なんだそれ。聞いたことねぇぞそんなの。
「あなた達万事屋より何倍もよく働いてくれるって評判なのよ」
「嘘つけよ。キャバ嬢でこの仏頂面はねぇだろ。俺達の方がよっぽどうまくやるって」
ふて腐れた銀時はお妙に抗議する。
「あら、どこが仏頂面なのかしら?」
お妙の言葉に「え?」と銀時が振り返る。
「お客さん、冗談はやめてください」
にこにこ。
いやこれどう見ても作り笑顔だけど!?張り付いてるよ顔に。明らか作り笑顔だよこれ。
「じゃ、私はあっちにいるゴリラの接待頼まれてますから」
こっちのキャバ嬢は不気味な笑みを浮かべて行ってしまった。
「おいおいお嬢さん。オメー便利屋ってーのは万事屋のパクりだろ。訴えてもいいですか」
すると、お嬢さんと呼ばれた人物はまた仏頂面に戻って銀時を見据えた。
「お嬢さん言うな」
「だってオメーの名前知らねぇし?キャバ嬢はなぁ、普通初対面だったら名乗るもんだよ?」
「…離久、です」
渋々といった感じに名乗った離久は、テーブルの酒瓶を手に取り酌をした。
「離久か。俺は
「万事屋の坂田銀時」
離久は銀時が名乗る前に呟いていた。
「お?知ってんのか?俺達も有名になったもんだなぁ」
一人で舞い上がり、グラスに注がれた酒を一気に飲み干した銀時は、ちらりと横目で離久を盗み見た。
「…」
離久はすでに作り笑顔を決め込んでいた。