小説部屋

□愛したい
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ザァッと風が吹き抜ける夜。今日の見張りはナミだ。


「はぁ〜退屈。」


敵が接近する事はほとんどないので、寝れない退屈な夜になる。

船の傷の数を数えたりして暇をもてあそんでいたら、誰かがマストに登ってきた。


「誰?」

「おれだよ。ナミ。」

「あら、ルフィ。」


登ってきたのはルフィだった。


「どうしたの?こんな時間まで起きてるなんて珍しいわね。」

「だって、ナミが退屈してんじゃねぇかと思ってよ。」

「えっ?」


私のために?


「せっかくだし、一緒にいようぜ。」

「うん…。」

「最近、バタバタしててこうやってゆっくり2人で話せなかったしな。」


ルフィはしししっと笑った。


「そうよね…。やっとゆっくり話せるわね。」

「おれ、寂しかったんだ。ナミといれなくて。」

「私もよ。2人で話したかった。」

「ああ、だから…。」


突然、ルフィに抱きしめられた。


「ルフィ…んっ。」


ルフィはナミにキスをした。

そっと、触れるだけのキス。

2人の唇は、あっという間に離れてく。


「ルフィ…。」

「ごめんナミ、我慢できなかった。」

「ダメよ。我慢して。」

「…もう無理。我慢できねぇから。」


もう一度キスをした。

さっきより深いキス。


「ふぁっ、ル、ルフィ!」


ナミはルフィを押し返した。


「ナミ…。」

「ダメよ、こんなの。」


ナミは涙をこらえて言った。


「本当に我慢できねぇ。ごめんナミ。」


ルフィはナミの服に手をかけようとした。

ナミはとっさに手を振り払う。


「ダメだって!」

「なんでだよ!」

「私達はそういう関係を持ったらダメなのよ…!」

「なんで?」


ナミはルフィの帽子に触れた。


「あなたには夢がある。私にも。」

「………。」

「分かる?私達は‘仲間’なの。もし恋人になったらお互いの夢の妨げになるの。海賊王になれなくなるのは嫌でしょ?」

「ああ、おれは海賊王になりてぇ!」

「私だって自分の夢を叶えたい。私達は‘夢を求める冒険者’。だから、夢が叶ったら私達はそれまでの関係なの…。」

「確かにそうだな…。」

「だから………。」


ナミはとうとうこらえなかった涙を流しながら言った。


「…私達は、そんな関係を持ったらダメなのよ…!」

「…!」




2人は無言で静かに抱き合った。



涙を流しながら。




−ザァァ。


強い風が吹き抜ける夜。




お互いの中に入らない事が、お互いを守る方法だと思った。

夢を壊してしまいたくないから。




守りたい気持ちで精一杯で


君の表情が見えなくなってた




手を伸ばせば届くのに、それは決して許されない。


こんなにも愛しているのに…愛したいのに…。



そんな気持ちは、


とてももどかしく、切ない。






END.
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