マリオネットワルツ

□鬼さんこちら
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さわさわと葉の擦れる音が聞こえる。
その葉音だけが、中在家長次の周りにある唯一の音だった。

自らが第六学年に在席する忍術学園から程近い山の中でのこと。

梅雨の時期にもかかわらず、木々の間から降り注ぐ木漏れ日はどこまでも柔らかい。

あまりの穏やかさに長次は一瞬、六学年全体で実技の授業中だと言うことを忘れてしまいそうになる。
六学年の生徒は実技の授業が始まる前、組ごとに色分けされた紐を渡された。
長次は紫色の紐が自分の腕にくくりつけられているのを指先で確認する。
この紐がある限り、生存者でいられる。

「......っ」

その時、長次の潜む場所からそう遠くないどこかでカサリと音がした。

そして次の瞬間、金属と金属がぶつかり合う甲高い音が辺りに響く。

長次の握る苦無ともう一人の忍が持つ苦無から発せられた音だった。

二人は少しの距離を置き対峙する。
相手の忍も長次と同じ深緑色の忍装束を身に付けている。同学年の生徒だ。
二人の身なりの相違点はひとつ。

腕に結ばれている紐の色が違う。
長次の紐の色は紫。
相手のそれは橙。

―――敵だ。
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