マリオネットワルツ

□淡く甘く
2ページ/6ページ


兵法の応用について、教師が講義を行っている六年は組の教室。
先程行った実技実習の反省点、今後の課題などを見直す授業だった。
留三郎の隣に座る伊作は実習の後、
負傷した忍たまの手当てをしていたため、わずかに香る薬草の香りが留三郎の鼻腔をつく。

そんな時だった。

「失礼します」

教室の引き戸を開けた人物は仙蔵だった。
は組の忍たま達は興味津々に教師と小声で話し出す仙蔵を見る。

「何かあったのか?」
「何だろうね」

留三郎と伊作もなぜ い組に在席する仙蔵が、は組の教室に来るのか分からなかった。
それに加え今は授業時間だ。
普通何かあったと考えるのが妥当だろう。

「ーーー分かった。それで大丈夫なのか」

仙蔵の話を聞いていた教師がそう言うと。

「はい。一度着替えるため長屋に行きました。しばらくすると来るはずです」

もう は組の忍たまに聞かれても差し支え無いのか、教師と仙蔵は普段通りに話す。
では授業に戻りなさいと教師に言われ、仙蔵は一礼して教室を出ていった。

それから少しして再び引き戸が開かれる。
そちらへ目を向けた忍たま達は酷く驚いてしまう。
立っていたのは顔や首筋、忍装束から覗く手にさまざまな傷をちりばめた狭野橋上総だったのだから。

遅れて申し訳ありませんと謝罪する上総に教師は座りなさいとだけ言って、中断した講義を続ける。
今思えば厳しく叱らなかったのは教師なりの気遣いだったのかもしれない。

上総は留三郎と伊作の座る長机まで行き、腰を下ろす。

近くで見ると上総の負う傷は痛々しいものだった。
至るところに打撲の痕があり、赤黒く変色している。
加え、切り傷を覆う固まった血液が白い肌に自己主張していた。

転入初日にどうやったらこんな傷が出来るのか、留三郎は不思議に思った。
やがて授業も終わり、何があったのか留三郎は上総に尋ねようとしたが。

「なぁーー」

「狭野橋。話がある」

教師が留三郎より先に上総を呼ぶ。
小さく返事をして、上総は教室を出ていってしまった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ