欠月
□すれ違い
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僕と君を繋ぐものは、
もう何処にもなくて…
(牛尾Side)
今日は部活後に、時間の
ある部員達(数人)で、
夕食をかねた寄り道をする事になっていた。
練習が終わり部室で着替えている時、ふと「寄り道」という言葉に思いがよぎり、ボタンにかかっていた手が止まる。
ある意味では初めてで… ある意味では懐かしい、
僕は「寄り道」という単語に胸が熱くなるのを感じていた。それは中学の頃、自分が何よりも憧れていたもの。
そう「彼」と一緒に居たくて、少しでも長く、彼の傍に居たくて…。
よくニルギリにワガママを言っては、
『牛尾家の跡取りともあろう御方が寄り道など関心しませんぞ。』
――なんてたしなめられて、落ち込んでいたなぁ…。
今更になって許される寄り道に僅かな皮肉さを感じつつ、そんな事を考えている自分に虚しさを感じて、ため息をつく。
「…あ!そういえば牛尾キャプテン、迎えは大丈夫なんスか? 」
ふと後ろからそう声を掛けられた、その瞬間に。
一瞬のフラッシュバック。
「テメェ、迎えの車は
大丈夫なのかよ!?」
屑…、桐くん …
「…キャプテン?」
返事を返さない僕を不審に思ったらしく、
猿野君が心配そうに僕の顔を覗き込んでいる。