欠月

□―loyalty―
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  永遠に変わらない 
  忠誠を君に……。





 †――loyalty――†




 
 山の美しい景色、自然
 の清らかな空気の中、
 中学生である牛尾少年
 は目を輝かせて山道を
 歩いていた。

 中学校に入るまでは、
 小学校に通う事も叶わ
 ず、厳しく家庭内で
 教育をされていた牛尾
 にとって「部活の合宿」
 というのは、初めての
 経験であった。  


初めてのお泊り。その上、部活の合宿で、野球が存分に出来るのだ。

こんなに嬉しい事はない。
それに、彼と一緒なのだ。
隣で無愛想に歩く恋人の横顔を見つめながら、牛尾は嬉しそうに笑った。



一方、その恋人の方は道先を一点に見つめながら、
何やら不機嫌そうに足を進めている。


その最大の理由は隣で歩いている牛尾に、しつこく話し掛けている転校生にあった。


牛尾の右隣りにちゃっかり陣地を取り、牛尾の人柄を善いことに、なにやら図々しく話掛けている。


屑桐が転校生を毛嫌いしているのには理由があった。

まず一つ目は転校生が
どうやら牛尾と同じく、
金持ちであるという事。

二つ目は、それをいい事に転校生が必要以上に牛尾に話し掛けている事。

三つ目は、自分の事をなにやら見下した様な目で見てくること―――。



「今度の社交界、
 牛尾君も誘われている
 んだろう?
 僕も呼ばれているんだ。 是非ご一緒したいな。」


「もちろんだよ、楽しみ
 だね。」




畜生…話にも入れねぇ…。




隣で楽しそうに上流会話を繰り広げている恋人に
改めてギャップを感じてしまう屑桐であった。


そんな屑桐の様子に気付く事もなく、親切心で転校生に優しくしている牛尾、



楽しい合宿に早くも暗雲
が立ち込め始めていた。
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