欠月

□裏切りの恋
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  冷めたフリをして、
  君に口付ける。



いつもの時間に、いつもの場所で。もう二人が
何度も繰り返した行為を、重ねる。

互いに恋人がいるのに。

まるでそれが当たり前の様に、君に抱かれる。


「…っ、ぁあ…!」


愛 なんて、ない…。


「あ…ッ、あぁ‥ァ!
く‥ずきり…っ‥!!」


こんなものは『愛』なんかじゃ、ナイ。

…ただ、君を手放したくなかっただけだ。


離れて、別れて、互いに恋人がいても、君の中に
自分を繋げておきたい。


『僕の心に君は要らない。でも、君の中には僕を刻み付けておきたい。』


…なんて、身勝手な感情。


互いに『恋人』になんかもどる気はナイけど、
一生、離れる気もない。


きっと、君も、僕と同じ。

だから、


何も言わずに、僕を抱く。


激しく抱かれても、どんなに抱き合っても、そこには『愛』なんて一切なくて。ただ餓えた獣の様に互いをむさぼり、求めあう。

いつ『始まった』のかも分からないから、
『終わり』にする事も出来ない。


互いに逢う度に他人との情事の残跡に嫉妬しあい、それを躰でぶつけ合う。


――…それでも、これは
愛じゃなくて、ただ、君の『特別』でいたいだけなのだ。

大事な恋人に、バレない
程度で。
 
 
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