欠月
□プライベート・レッスン☆
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普段より、ざわついた教室。明暗がはっきりとわかれている生徒達の表情に、
教師の手から一人ひとりに返却されるプリント。
「えー…であるからして、 本日の授業はこれで
終了。あと、30点以下 の者は明日の放課後に
追試を行なう!該当する 生徒はそのつもりで。」
教師が言った途端に鳴る、けたたましいチャイムの音。礼を済ませた後、生徒達はそれぞれ帰りの支度を始めた。
ほとんどの者が楽しそうに帰り支度をする中、ひとり暗い顔で、自席から一歩も動かずにいる者がいた。
「屑桐君、やっとテスト
が終わったね!
明日は久しぶりに部活
ができるね!!」
話し掛けている相手の暗い表情にも気付かずに、
牛尾は心底嬉しそうに目を輝かせた。
「…‥牛尾。」
「なんだい、屑桐君?」
「キサマ、英語は得意か… ?」
「…‥え?あぁ、うん。
苦手ではないよ。」
「今、返されたテストも、 90点代か…?」
「えっ…?‥まぁ、一応。 」
ガシッ!
「……‥頼む。」
屑桐に勢い良く右肩を掴まれ、驚く牛尾。
よく見ると、目の前には
突き付けられた紙一枚…
屑桐の答案用紙があった。
「…‥屑桐君。‥君、
追試になっちゃったの
かい!?」
プライベート・レッスン☆
「…まったく、どうして
君って英語だけはダメ
なのかな。」
「…知るかよ。それに、
ここは日本だぞ…!
こんなモンが一体何の
役に立つってンだ…?」
「…国外に行った時とかに 、困るだろう?」
「…オレには必要ない。
お坊っちゃん育ちの
お前と一緒にするな。」
頑固なまでに英語を否定する屑桐の態度に、
牛尾はやれやれといった感じで溜め息をついた。
あたりはしーんとしている、しずかな場所。
二人は今、あまり人気のない放課後の図書室にいた。追試になってしまった屑桐の為に、仕方なく牛尾も帰りの時間を遅らせて、屑桐の勉強に付き合う事にしたのだ。