欠月

□プライベート・レッスン☆
1ページ/5ページ

普段より、ざわついた教室。明暗がはっきりとわかれている生徒達の表情に、
教師の手から一人ひとりに返却されるプリント。


「えー…であるからして、 本日の授業はこれで
 終了。あと、30点以下 の者は明日の放課後に
 追試を行なう!該当する 生徒はそのつもりで。」


教師が言った途端に鳴る、けたたましいチャイムの音。礼を済ませた後、生徒達はそれぞれ帰りの支度を始めた。

ほとんどの者が楽しそうに帰り支度をする中、ひとり暗い顔で、自席から一歩も動かずにいる者がいた。


「屑桐君、やっとテスト
 が終わったね!
 明日は久しぶりに部活
 ができるね!!」


話し掛けている相手の暗い表情にも気付かずに、
牛尾は心底嬉しそうに目を輝かせた。


「…‥牛尾。」

「なんだい、屑桐君?」


「キサマ、英語は得意か… ?」

「…‥え?あぁ、うん。
 苦手ではないよ。」


「今、返されたテストも、 90点代か…?」

「えっ…?‥まぁ、一応。 」


    ガシッ!



「……‥頼む。」


屑桐に勢い良く右肩を掴まれ、驚く牛尾。
よく見ると、目の前には
突き付けられた紙一枚…
屑桐の答案用紙があった。


「…‥屑桐君。‥君、
 追試になっちゃったの
 かい!?」



  プライベート・レッスン☆



「…まったく、どうして
 君って英語だけはダメ
 なのかな。」

「…知るかよ。それに、
 ここは日本だぞ…!
 こんなモンが一体何の
 役に立つってンだ…?」


「…国外に行った時とかに 、困るだろう?」

「…オレには必要ない。
 お坊っちゃん育ちの
 お前と一緒にするな。」


頑固なまでに英語を否定する屑桐の態度に、
牛尾はやれやれといった感じで溜め息をついた。
あたりはしーんとしている、しずかな場所。
二人は今、あまり人気のない放課後の図書室にいた。追試になってしまった屑桐の為に、仕方なく牛尾も帰りの時間を遅らせて、屑桐の勉強に付き合う事にしたのだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ